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15.ヤキモチ!?
あれから三十分後。
俺はリカさんと一緒に麓へ。
食糧庫、味噌蔵、酒蔵、縫製所の順で案内してもらって、今は精米所を訪れている。
「おぉ! うめぇじゃねえか!」
「えっ? ほっ、本当ですか?」
もみ(外皮に包まれたままのお米)がざーっと音を立てて茣蓙 の上に落ちていく。
引き切った稲をもう一度櫛みたいな鉄の刃に通せば、残りのもみもぽろぽろと音を立てて落ちていった。
小学校の時にやった『米作り体験』がこんなところで役に立つとは。
何でもやってみるもんだな。
「見込みがあるぜ! 気に入ったぁ!!」
「うぉっ!?」
ばんっと背中を叩かれた。河童の新八 さんだ。
緑色の肌に白いお皿と、大方俺のイメージ通りだったけど、体格だけは大ハズレ。
何とゴリゴリのゴリマッチョだった。
リカさんもマッチョだけど、何というか種類が違う。
例えるならそう、リカさんが『競泳選手』で、河童さん達は『ボディビルダー』って感じだ。
もやしな俺からすれば、どっちも眩しくて仕方がない。
「旦那、可能であれば週に何日か坊ちゃんをお借りしたいのですが」
「ん~……優太 には『本業』があるからな――」
「ぜっ、全然大丈夫です! ぜひ手伝わせてください!」
「えっ?」
「「「おぉ!!」」」
「いいぞ、坊主!!」
周囲から野太い歓声が上がった。
作業場にいるのは全部で二十人くらい。
牛や馬みたいな見た目の妖さんもいるけど、大半はゴリマッチョな河童さん達だ。
ここは男所帯なのもあってか、いい意味でカラっとしている。
俺のこともすんなり受け入れてくれて、正直本当にありがたかった。
だから、そのお礼も込めて立候補した。
どこまで役に立てるかは分からないけど、俺なりに励んでみようと思う。
「明日から頼むぜ!」
「待ってるからなぁ!」
「はっ、はい! よろしくお願いします!」
屈強な妖さん達に見送られながら、リカさんと並んで精米所を後にする。
少し離れたところでリカさんが小さく息をついた。
「痛く気に入られたね」
不貞腐れたように。
だけど、どこか誇らしげな調子でリカさんは言う。
俺にはそれが妙にこそばゆくて。
照れ隠しに鼻の下を擦った。
「無理しないでね」
「ありがとうございます! えと……本業に支障をきたさない程度に、頑張るようにしますね」
「あ……」
「?」
リカさんの動きがぴたりと止まった。
驚いてる? かと思えば、口元を押さえてふふっと笑い出して。
「そっか。さっきのはヤキモチか」
金色の瞳は相も変わらず優し気で、慈愛に満ち満ちているのに……何でだろう?
背中がぞくっとする。つーか、ヤキモチって!!!
いや、待て待て! 他意はない! 絶対にない!!
キスキャンセルされたばっかだろ。冷静になれ、俺!!!
「もっ、もしも! もしも俺がバテちゃって本業に支障をきたすようなら、その時は『操術』で、無理矢理にでも俺の体を動かしてもらえますか?」
「無理」
「なっ、何で?」
「もう解いちゃったから」
「はっ!?」
「大丈夫だよ。優太の人柄はもう十二分に伝わったと思うから」
「いや……でもまだ、数えられるぐらいの人達としか――」
「小さな里だから」
正直嬉しい。だけど、それ以上に不安だ。
リカさんの肩には、里のみんなの命がかかってるんだ。
出来ればもう少し慎重に判断してもらいたい。
「里の案内はこれぐらいにして、最後に私のとっておきの場所に案内しようか」
「っ! いいんですか!? ありがとうございま――っ!」
手を取られた。
そのままぎゅっと握って微笑みかけてくる。
「えっ? ……えっ!?」
「嫌?」
「っ、イヤじゃないですけど……」
頭が、口が回らない。心臓の音がうるさすぎる。
ヤキモチ。ヤキモチ。ヤキモチ。
まさか本当に?
「ふふっ、それじゃあ行こうか」
「あっ、あい……」
どんどん膨らんでいく。期待とわくわくが。
押し潰そうとしても、押し戻されて。
ダメだ。抑えられない。
「~~っ」
視界に映るのは地面ばかり。
顔はしばらく上げられそうにない。
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