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24.プロポーズ
「ん? あっ!? えっ、エッチのお誘いじゃないですよ!! 俺が言いたいのはその……っ、俺の心音、聞いてみませんか? って話で!」
「どうして?」
「落ち着くって聞いたことがあるんです。お母さんのお腹の中にいた時のことを、思い出すらしくて」
「母上の……」
「現に俺も寝ちゃってたでしょ? 初めて会った日に、その……リカさんのお胸の中で」
リカさんはパチクリと瞬きをした後で、ふっと笑い出した。
色々と思い出したんだろうな。
居た堪れないけどここは我慢だ。
「分かった。ぜひお願いするよ」
「やっ、やった!」
OKを貰った俺は、はいはいで移動して布団の上へ。
二つの布団をくっつけて、ごろんっと横になった。
「どうぞ」
「うん」
リカさんは短く返事をすると、紺色の羽織を脱ぎ始める。
思い起こされるのは昨晩の記憶。甘くて激しい夜の記憶だ。
「~~っ」
しっかりしろ、俺!
今は癒しモード。エロスイッチは完全オフだ!!
「それじゃあ、お邪魔するね」
「っ!!! はっ、はい!!!」
白い着物姿のリカさんが俺の隣に。
そのまま横になって、胸の中に入ってきた。
リカさんの頬っぺた&耳が俺の胸に埋まる。
「……っ」
心拍数が跳ね上がっていく。
ヤバい! 早く鎮めないと。
ひとまず深呼吸をしてみるけど、何も変わらない。
むしろ悪化する一方で。
「ほんとだ。落ち着くね」
「うっ……本当に落ち着きます?」
「落ち着くよ」
「……心臓の音、うるさくないですか?」
「ふふっ、確かにちょっと速いかもね」
「ぐっ!!」
「でも、それはそれで嬉しいから」
頬を擦り付けてくる。
甘えてくれてるんだ。素直にそう思えた。
胸の奥がきゅ~~っとする。
こういうの『愛おしい』って言うのかな?
これからも応えていきたい。ずっと。ずっと。
「優太 」
「はい。何でしょう?」
「結婚しよっか」
「…………………………………………ん?」
今、何って言った?
思わずリカさんの方に目をやるとバチリと目が合う。
リカさんは微笑んでいた。
だけど、金色の瞳は物凄く真剣で。
「……っ」
どうしよう。嬉しい。ヤバいよな。
まだ出会って三日しか経っていないのに、昨日から付き合い始めたばっかなのに……俺の答えはもう決まってて。
「私のお嫁さんになってくれますか?」
ダメ押しだ。そんでもってフライング。
リカさんの顔にはもう『幸せ』って書いてある。
俺の答えを確信してるんだ。
何か悔しいな。でも、やっぱそれ以上に嬉しくって。
「っ、はい。俺で良ければ」
「ありがとう」
キスをしてきた。唇に、とびっきりの甘いやつを。
至近距離で見つめ合って、堪らず目を伏せる。
「リカさんって、ほんと急ですよね。里への勧誘といい、このプロポーズといい。マジでフィーリングで……直感で生きてるんだなって、思います」
当てつけ……というか、言い訳だ。
一生に一度きりのプロポーズだったのに、気の利いたことの一つも言えなかった。
そんな自分の醜態を誤魔化すための。
「ごめんね。私はどうにも浅慮で」
「えっ?」
大きな耳がぺたりと萎む。
あれ? 実は割とコンプレックスだったり?
しっ、しまった! 途端に猛省。咳払い一つに切り替える。
「確かにリカさんはメチャメチャ判断が早いですけど、ちゃんと責任を取ってくれるじゃないですか!」
「……いや」
「この里が、その証明みたいなもんでしょ」
「……それは」
「だから、信じられる。唐突なプロポーズでもOK出来たんですよ」
「…………」
ダメだ。元気を取り戻すどころか、余計に沈んでいく。
謙遜してるのかな。全然ダメ。至らないことばかりだって。
「自信を持ってください。リカさんは立派ですよ」
「……ありがとう」
リカさんの背中をそっと撫でる。
リカさんはされるがままだ。そうか。求めてくれてるんだ。
都合よく解釈した俺は、リカさんのおでこにキスしたり、「大好きですよ」って囁いたりして愛情を示していく。
リカさんのためって思ったら、自然と動けた。これもまた愛の力か。
――転生して三日目、俺はリカさんからプロポーズを受けた。
文字通りの『スピード婚』。だけど、俺は本気だ。
これから先もリカさんを支えていく。
リカさんが安らげる人であり続ける。
どんな苦難が待ち受けていようとも、俺は絶対にリカさんの手を離したりしない。絶対に。何があっても。
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