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40.妖狐転生(★)

 (かおる)さん達が帰ってから1週間後。俺はリカさんと2人、例の山小屋の中にいた。行灯(あんどん)の灯りが薄っすらと部屋の中を照らしている。鈴虫の唄も心地いい。何とも秋らしい夜だ。 「よいしょっと」  俺は枕元に藍色の風呂敷を置いた。結び目を解くと出てくる出てくる。シロツメクサの冠、千羽鶴、布製のお守り、丸い小石、大豆、鉢巻き、(かんざし)……などなど、何ともバラエティー豊かだ。 「…………」  『子宝・安産御守』の文字は見なかったことにする。まだ早い。その話は俺達の夢がある程度形になってからだ。 「里のみんなから?」 「はい。無事に転生出来るようにって」 「そう」  リカさんの指がお守りをなぞっていく。1つ1つ、愛おし気に。何だか(くすぐ)ったいな。 「優太(ゆうた)」 「はっ、はい」  いよいよか。重たくなった唾を飲み込みながら、リカさんと向き直る。リカさんは寝巻に身を包んでいた。色は白。絹製の上等なヤツだけど、凄く似合ってる。流石は王族(ロイヤル)。  因みに俺も同じものを着ている。けど、ま~似合ってない。まさに『服に着られてる』状態。ははっ、まったくこの差よ。 「んっ……」  唇が重なり合う。じっくりと体温を移し合った後で、そっと(ついば)んできた。撫でるように、味わうように。 「っ!」  布団の上に白い魔方陣が展開していく。俺はそんな布団の上に押し倒された。息つく間に帯が解かれる。そう。これが儀式だ。  俺がすることと言えば、ぶっちゃけいつもと変わらない。リカさんに抱かれる。ただそれだけ。俺がみっともなく喘いでいる間に、妖狐にしてくれるのだそうだ。 「っ、そこ」  リカさんの手が俺の胸に触れた。 「うん。分かってるよ」  なんて返しながらも、リカさんの手は止まらない。手の平でぐにぐにと撫で回したかと思えば、指できゅっと摘まんできて。 「ダメ……っ」  俺の妖力には催淫効果がある。取り込んだら強制的に発情してしまうから、今日そこを舐めるのはNGだ。術者であるリカさんは集中しないといけないから。 「、散々……っ」  『上書きセックス』あれは本当に凄まじかった。穂高(ほだか)さんの体温も感触も、その一切をペロペロはむはむチュッチュしてきて。リカさんが満足する頃には、乳首も唇もパンパンに腫れ上がっていた(術で直ぐに治ったけど)。薄々察してはいたけど、リカさんって相当なヤキモチ焼きだよな。まぁ、おかげで俺のトラウマは大分解消されたけど。 「また今度上書きさせてね」  胸を一撫でして唇にキス。仕上げに悪戯っぽい笑顔を添えてきた。 「~~っ」  あざとい! 最高!! もう好きにしてください!!! 「んっ!」  チンコを咥え出した。フェラはありがたいことに経験済み。3か月前のあの宣言通り、しょっちゅうシてくれてる。お陰で俺の方は大分慣れた。感じてはいるけど、それなりに余裕がある。だけど。 「ん゛っ!」  リカさんはまだ慣れない。相変わらずしんどそう。まぁ、無理もないよな。リカさんは口も小さいし、それに何より咥えさせられてるのはチンコだ。臭いし、味だって最低だ。『おいしい♡』を求める方がどうかしてる。AVの見過ぎだ(←)。  そんなわけで色々と申し訳ない……はずなのに、同じぐらいドキドキもしてて。やっぱ俺も男なんだな。 「あ゛っ!」  リカさんの指が入ってきた。細くて長い指が俺の体を開いていく。おまけにチンコの先っぽにも吸い付かれて、~~っ堪らない。 「いっしょ、は……あ゛っ!? ンッ!!」  追い打ちとばかりに俺のイイところを擦り始めた。容赦ねえ。ひたすらに擦られて、声も体も止まらなくなる。 「だっ……~~っ、あぁ!?」 「ん゛!?」  一気に脱力した。イったんだ。我ながら早すぎる。 「あっ……! えっ?」  間髪いれずに咥え出した。なっ、何で? 「悪いけど、今日はこれの繰り返しだよ」 「えっ……」  、なんだろうな。分かってる。分かってるけど……キツいかも。 「ん……はっ……」  案の定キツかった。気持ちいいけど全然イケない。腹の奥がムズムズする。欲しい。リカさんのが。リカさんので思いっきり突いてほしい。 「っ、リカさん」 「ん?」  ダメだ。ダメなのに、欲しいと思ったらもう止められなくて。 「先っぽだけでいいから、ナカに……っ」  言った。言ってしまった。リカさんはそんな俺を見て困ったように笑う。 「ごめんね。私ときたら儀式にばかり気を取られて」 「いえ! 俺の方こそ堪え性がなくて。……ははっ、こんなんじゃ言い訳出来ないですよね。俺、マジで淫乱なのかも――っ!」  リカさんは俺の唇に指を押し当てると、そのまま首を左右に振った。否定してくれたんだ。ヤバい。泣きそう。 「あっ!? はっ……!」  きた。リカさんのが。苦しい。だけど、物凄く幸せで。 「動くよ」 「はい――あぁ゛っ♡」  前後に揺すられる。奥まで突かれて、イイところも擦られて。 「んんっ、んふ……んっ……」 「はぁ……ン……ゆう、た……」  キスをする。唾液が流れ込んできた。少し青臭い。俺のアレの味だ。けど、構わない。むしろ興奮する。リカさんの口を犯してた。その事実を実感して。 「!?」  何だ? 腰と頭が熱い。音も聞こえない。 「~~っ!!!」  視界がチカチカする。一体何が。 「ああ、本当に良かった」  ぐっと抱き寄せられた。俺はそのままリカさんの膝の上へ。 「んっ?」  何だ? リカさんの声がやたらとクリアに聞こえる。それに……。嗅覚まで敏感になっているような気がする。 「あっ……」  もしかして。俺は恐る恐る手を伸ばした。頭の上にはもふもふな何か。振り返れば、尾てい骨のあたりから黒いもふっとしたものが生えていた。 「尻尾!? おっ、俺の尻尾!!!」  数は1本。流石に天狐(てんこ)ってことはないだろうから、一番下の位なんだろうな。っていうか、俺も天昇(てんしょう)したりするのかな? 「黒くて綺麗な尻尾だね」 「っ!」  銀と黒の尻尾が絡まり合う。あったかい。締め付け具合もイイ感じで。 「んん゛」  ヤベ。変な声が出かけた。落ち着け、俺。 「これからはこういうことも出来るね」 「最高♡♡♡」 「ふふっ、それは良かった」  リカさんは笑顔を浮かべた……けど、その笑顔は直ぐに引っ込んで。 「……あのさ」 「はい?」 「自分のだけで……その……満足しないでね?」 「~~っ!!!」  俺は1人悶絶した。リカさんの胸の中で。この人は何処まで俺を狂わせるのか。 「酷いな。私は真剣なのに」 「これは喜んでるんですよ」 「ん~?」  良かった。依然として俺の心は読めないみたいだ。これからもこの思いを言葉で、仕草で伝えていけるんだ。普通の人達と同じように。ほんと神様には感謝してもしきれないな。 「リカさんの尻尾が一番ですから」 「っ!」  リカさんの耳がぴんっと立った。顔もゆるゆるになって。 「ほんと大好き」  俺は愛おしさの成すままにリカさんを抱き締めた。ぎゅっと。力の限り。  ―― 一緒にいられる時間はそう長くはないのかもしれない。そんな覚悟を胸に生きていこう。いつかその日が来た時に、後悔することのないように。

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