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冷やし中華食いたい
朝、珍しく自分で起きる事が出来た。のに、起きたくないくてずっとベッドに潜っていた。
眠い訳じゃない。昨日の早川との出来事を思い出すと気が重くなるだけ。
それでももう遅刻は出来ないから着替えて今日は一人で学校へ向かう。
あの後早川には何も言えなくて、そのまま帰って来た。さすがに早川も追って来る事なく、連絡も無かった。
ああ、まさかまたこんな事になるなんて……
もう早川とは元の関係には戻れねぇだろうな。
くそ、何で告白なんかしてくるんだよっ。
ふと怒りが込み上げて来たところに後ろから来た自転車にベルを鳴らされてイラっとして振り向きながら睨む。
「って、早川ぁ?」
「良かったー!間に合った?寝坊しちゃってさぁ~」
え、何普通に声かけてんの?ネクタイも締めないで、急いで俺の事追いかけて来たっての?
「ほらさっさと後ろ乗って!貴哉もちんたら歩いてたら遅刻するよー」
言われるがまま後ろに乗り込むとチャラ男号は走り出した。
あれ、昨日の出来事は夢?それぐらい早川はいつも通りだった。
「貴哉ってば一人で起きられたんだな!目覚ましかけたのか?」
「いや、何か起きた」
「そっか~!最近俺に起こされてるから早起きに慣れたのかもな」
「てかお前足平気なのかよ?」
「ん?少し痛いけど、貴哉が思ってる程悪くないんだよコレが!」
あははって普通に話しながら笑ってるけど、こいつ昨日告白して来たよな?そして俺は何も言わずに逃げ帰った。
もしかして、早川の中で無しになったのか?
だったらそれはそれで助かるけど……
「貴哉~」
「なんだ?」
「冷やし中華食いたい」
「あ、食堂のか?」
「うん。今日行かね?」
「いいけど」
顔は分からないけど、嬉しそうに笑う早川が想像出来た。
俺は早川とはこのままの関係でいたい。
またあの時みたいになるのは嫌だった。
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