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アレお母さんだけど?
中西の家は今時のお洒落な家だった。綺麗な芝生の庭にはゴールデンレトリバーって言うでっけぇ犬がいた。
インターフォンを鳴らすと、若そうな女の人の声がした。
『はーい、どちら様ー?』
「こんにちはー。中西くんのクラスメイトの秋山です。中西くんが早退したので様子見に来ましたー」
『あ!お友達?今開けるね!』
するとすぐに玄関から声の主っぽい女の人が出て来た。
白いTシャツに花柄のロングスカート。長い髪は綺麗に巻かれていて、ほっそりとしたスタイルに長い足。更に超が付く美人!
中西の親族だってすぐに分かった。年齢的に姉ちゃん辺りだろ。
「いきなりすいません。プリントも持って来ました」
「ちょうど良かったわ!早く来て!あの子ったらずっと部屋に篭りっぽなしで」
「へ?ちょ!」
挨拶もそこそこに、いきなり腕を引っ張られて家の中に連れ込まれる。そして階段を上がり中西の部屋であろうドアの前まで連れて行かれた。
「直登ー!開けなさーい!友達が来たわよー!」
「友達ぃ?誰ぇ?」
「秋山くんよ!」
「貴哉ぁ!?」
驚いたような声がして慌てて中西が部屋から顔を出した。とりあえず元気そうで良かった。
「よう、元気そうだな」
「な、何で貴哉が家に来たんだよ?」
「プリントと、昼間の事謝りに来たんだ」
「もー秋山くんと喧嘩しちゃったから帰って来ちゃったのね?実はね、直登って今まで学校を早退どころか休んだ事もないのよ。だからいきなり帰って来たからビックリしちゃった」
「余計な事言うな!貴哉入って!」
「ちょっと!私も入れなさいよー!」
「うるさいなー!下行ってろよ!」
中西に腕を引かれて無理矢理部屋に入れられた。そう言えば中西が休んでるの見た事ねぇな。
中西と姉ちゃんの会話を横で聞いてたら、目が合ったけど気まずそうに逸らされた。
「そんなに言ったら姉ちゃんかわいそうだろ」
「姉ちゃん?アレお母さんだけど」
「うっそ!母ちゃんなの!?若くね!?」
「それよりも謝りに来たって本当なの?」
「ああ本当だ。教室戻ったら中西帰ったって言うからこうやって謝りに来たんだ」
「……貴哉が出て行ったあと、空くんが行ったでしょ?何を話したの?」
「え?別に何も話してねぇよ。屋上で寝てただけだ」
「嘘つき。貴哉も空くんが好きなんでしょ」
「何でそう思うんだ?」
「空くんばっかじゃん」
「そんなつもりはねぇんだけど……んー、屋上でさ、ちゃんと言ったんだ。付き合えねぇって」
「え!空くんを振ったの?」
「ああ……って今は早川の話じゃなくて」
「実はね、俺も春くんを振ったんだ。だからもう付き合ってないんだ」
「みたいだな」
「なんだ、春くんに聞いたの?まぁいつかみんなに知られるとは思ってたけどね」
「もう戸塚の事なんとも思ってねぇの?」
「んー、特に。元々春くんは俺が貴哉の事好きなの知っててそれでもいいって言うから付き合ってただけなんだ。好きは好きだけど、俺が本当に好きなのは貴哉だよ」
「っ!」
「もう気付いてるでしょ?俺の気持ち」
「えっと、いや……薄々?」
「俺はね、貴哉の事が大好きなの♡誰にも渡したくない。空くんにもね」
「中西……」
「ジュースお待たせー!」
っとここで中西母がジュースとお菓子を持って入って来た。タイミング的にめちゃくちゃ気まずい!
焦ってる俺に中西はクスクス笑ってた。
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