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母ちゃん!助けて

 直登は俺の部屋に入るなりクローゼットを開けた。そして俺の服を物色し始める。 「意外と無地の物が多いんだね~、柄物とか好きそうなのに」 「服なんか適当だ。無地だろうが柄物だろうが何でも着る。今は無地の気分なんだよ」 「なるほど!流行には囚われないって事?貴哉らしいね」 「てか人のクローゼットなんか漁って何が楽しいんだ?」 「貴哉の事を知るいい機会だからね♡秘密の日記とかあれば盛り上がるんだけど」 「んなもんねぇよ」 「あー、これ卒アル?見ていい?」 「いいけど……」  何か長くなりそうだな。ここでスマホが鳴った。見てみると早川からの着信だった。  あ!夜来るとか言ってたな! 「誰からぁ?」 「母ちゃん!ちょっと電話してくるな!」  直登にバレたらうるさくなるからこっそり下のリビングに降りて来て早川に掛け直す事にした。 「あ、もしもし?悪ぃけど、今日無しにしてくれるか?今直登が来てんだよ」 『帰るまで待ってるよ』 「それが遅くまで居そうなんだよ」 『用があるって言って帰せばいいじゃん』 「簡単に言うけど、下手に言って怒らせても面倒くせぇだろうが」 『俺が言おうか?』 「もっと面倒くさくなるわ!」 「貴哉ー?ちょっと貸して~?」 「あ?何……な、直登!?」  早川と電話してたら後ろから直登にスマホを取られた。そして普通に話し始めた。 「空くん?俺中西だよ。貴哉に何の用?」  直登の声しか聞こえねぇからめちゃくちゃ不安だぁ!てか直登怒ってる?母ちゃんからだって嘘ついちゃったしな。 「はぁ?そんなのダメに決まってんだろ!」 「ちょ、直登何話して……」 「てか今貴哉と付き合ってるのは俺なんだよ。勝手に手出してんじゃねぇよ」 「おい直登!」 「貴哉からも言って!空くんに、もう関わるなって!」 「はぁ!?」  そう言って通話中のスマホを俺に向けてきた。  今の状況にどうしたらいいのか迷ってると、家のチャイムが鳴った。  あれ、母ちゃん帰って来た?とにかく助かった!母ちゃんに助けてもらおうと玄関まで走る! 「母ちゃん!助けて……え?」  玄関を開けてビックリ。  なんと、母ちゃんじゃなくて早川だったんだ。  そうだ、母ちゃんだったら鍵持ってるしチャイムなんか鳴らさねーで入ってくるわ……

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