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第37話

 知識を蓄えれば白露に発情期が来ていない理由だって解明できるかもしれないし、理由がわかったら発情期だって迎えられるはずだ。そしたら琉麒の正式な番になれる。  今はまだできないことだらけで不安もあるけれど、知識を身につけていけば解消できるはずだと自分を励ました。琉麒の望むように最後まで体を繋げるのは怖くもあるけれど、彼と正式に番になれる日が待ち遠しい。  ああでも、番になったとして白露の望むような関係を琉麒と築けるのだろうか。皇帝とお互いに助け合えるようになろうと思ったら、一体どれほどの努力が必要なのか見当がつかなかった。  それに皇帝の番だなんて、白露が大好きなのんびりする時間もあまり取れなさそうだ。  ぎゅっと枕を抱きしめて顔を埋めた。大丈夫、きっと大丈夫だと何度も自身に言い聞かせる。意識して深呼吸を繰り返しているうちに、段々と思考がとろりと落ちてくる。いつしか白露の意識は夢の中をたゆたいはじめた。 *****  ヒバリの声が聞こえて、パチリと目を覚ます。目の前に黄金の川が流れているように見えて、目をパチクリと瞬かせながら上の方に視線をやると、世にも美しい美貌の持ち主と目があった。 「おはよう白露、よく眠れたか?」 「琉麒……! おはよう、たくさん寝たよ」  頬杖をついて白露を見下ろす琉麒は朝の光に照らされて、神々しさを感じるくらいに美しかった。朝の日差しを受けて輝く玻璃の瞳を見つめ返し、目の下の隈が復活しているのを発見する。 「あれ、琉麒は寝たの?」 「いや、昨晩は眠っていない」 「なんで⁉︎ ちゃんと寝ないと体に悪いよ?」  驚愕に身を起こした白露を宥めるように、琉麒の大きな手のひらが肩を撫で下ろした。 「どうしても白露と触れあえる時間を作りたかったから、昨夜のうちに必要な仕事を前倒しで片付けたんだ」 「そんな……無理しないで、今夜はちゃんと寝よう?」 「できるように工夫してみよう」  約束はできないのか、琉麒は苦笑しながら言葉を濁す。 (僕にも何か手伝えることがあればよかったのに)  昨日半日文字を覚えようとしただけでは、仕事をするのに必要な知識量として全然足りないだろう。せめて今夜は琉麒に子守唄を歌って、しっかり睡眠をとってもらいたい。  琉麒は白露の心配などつゆ知らず、華やかな笑顔を見せた。 「白露、おいで」  白露のことを心から想っていると伝わってくるような笑みに、キュンと心が鷲掴みにされて腕の中に飛び込む。  抱きこまれて髪を撫でられると、逸る気持ちが穏やかに凪いでいくのを感じた。

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