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第46話
ハッと驚いた白露を、琉麒は優しげな瞳で見つめる。
「そう急がなくていい。一つづつ順番にこなしていくといい」
虎炎も同意するように頷き、助け舟を出した。
「まだ白露様の存在を公に広めるわけにはいかぬ。ここは我が番に心得を習うのはどうだ」
琉麒も太狼も納得したように肯定した。
「秀兎 なら適任だね。任せよう」
「アイツなら安心だな」
「そうなんだ、どんな人?」
「勉学に熱心で真面目な気質の持ち主だ」
琉麒の評価を聞いて、虎炎は頭を下げ琉麒に敬意を示した。
「もったいないお言葉でございます」
「事実だからね。探究心が強すぎるきらいはあるが、今回の場合はむしろ白露に興味を持って積極的に教育を施してくれるであろう」
どうやら虎炎の番である秀兎が、白露の教師として皇城に来てくれるらしい。教師に勉強を習うなんて初めてだからワクワクした。
里のおばあちゃんから竹細工の編み技法を教えてもらい、作れるようになった時はとても嬉しかったから、白露は学ぶのが好きだ。どんなことを教えてもらえるんだろうと想像しているうちに、食事会はお開きになった。
「じゃあな白露、しっかりやれよ」
「またお目にかかれる日を心待ちにしている」
「ありがとう、頑張るよ!」
二人に手を振って別れると、琉麒は白露を抱き上げてしまった。
「わっ」
「寝室へ向かおう」
そっとささやかれて心臓が早鐘を打ち始める。この前みたいなことをするのだろうか……思い出して赤面している間に、琉麒の部屋に辿り着いていた。真っ直ぐにベッドに向かうのを見て、慌てて止める。
「ぼ、僕っ、先に湯浴みをしたいな!」
「待ちきれないんだ、白露」
「……っ!」
寝台の上に下ろされて、両手を縫いつけるようにのしかかられる。大人の色気に満ちた彼の切羽詰まった表情は、白露の欲を刺激した。濃密な伽羅の匂いが降り注ぐように襲ってきて、酔ったようにクラクラしてしまう。
「心配しなくても、君は花のようにいい匂いがする」
「そう……かな」
「そうだよ。安心して身を任せてくれ」
唇が白露の肌の上を滑っていく。額からこめかみへとキスは降りていき、首輪にもキスを落とされる。
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