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第82話

 考え込む白露に向かって、太狼と虎炎はそれぞれ主張した。 「パンダがいいよな? 琉麒だってそれを望んでいるんだし」 「やはり由緒正しき伝統に則った麒麟柄が、式典には相応しいであろう」 「うーん……じゃあさ、麒麟もパンダも両方入れちゃえばいいんじゃない?」  白露の言葉に、二人は目を点にして驚いた。琉麒が興味深そうに相槌を打つ。 「なるほど、いい発想だ」 「麒麟柄を目立つところに配置して、パンダを周りに散りばめればいいと思うんだ。それでどう?」 「素晴らしい。これで決定したいと思うが、どう考える? 太狼、虎炎」  太狼と虎炎はそれぞれ腕を組んで唸っていたが、やがて顔を上げた。 「まあ、それならいいんじゃねえの。頭の固い奴らも納得するだろ」 「新しい試みではあるが、伝統を真っ向から否定しないその姿勢は評価に値する」  どうやら二人もこれでいいと認めてくれたらしい。琉麒は薄い唇に笑みを乗せて白露を褒め称えた。 「君のお陰で助かった。ありがとう」 「えへへ、どういたしまして」  初めて琉麒の役に立てたと、白露は頬を桃色に染めて喜んだ。いじらしい様子に琉麒はうっと息を詰める。 「ああ、可愛らしい……このまま寝室にこもりたくなる」 「おいおい、流石に今は仕事を片付けないと。披露宴までにやるべきことがいくらでもあるんだから」 「わかっている。ただの願望だ」  かなり残念そうに肩を落とす琉麒に、太狼は感心したように感想を口にした。 「お前、変わったよな。そういう風にちゃんと気持ちを口にするのって、白露と出会ってからじゃないか? いいことだよな」 「いいことだと思うのであれば、今日一日くらい休みを寄越さないか?」 「今は本気で無理だって。また白露の発情期に合わせて長い休みをやるから、それで勘弁してくれ」  白露も琉麒と一緒にいたいなあと気持ちがグラグラ揺れたが、やるべきことが山ほどあるのは一緒だ。どうやら用事は終わったみたいだからと、お暇することにした。 「僕、そろそろ帰るね」 「ああ、少し待ってくれないか」  立ち止まった白露の前に、竹細工のカゴが差し出された。 「あ、僕が作ったカゴだ」 「へえ、白露が作ったのか、器用だなあ。俺にもまた作ってくれよ」  琉麒の鋭い視線を受けて、カゴに伸びていた太狼の指先は引っ込んだ。 「ははっ、冗談だって。そんな暇ないよな」 「そう、暇がないのは百も承知なのだが白露、竹細工で作った作品は他にないか? 実は、母と父に贈る返礼品を、竹カゴに入れたいと思っている」   代々皇族の結婚式では、前皇帝夫妻に刺繍などの手仕事を施した品を、贈る決まりがあるらしい。

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