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第21話 動物園 ⑤

「止まって欲しいのか? いいよ。止まってあげるよ」  拓海は雅成の中の楔を突き上げたまま、動きを止めた。  自分の体重で、拓海の楔の先はじわじわと最奥の壁を押し上げる。 「あっ、あっ、あっ……」  拓海の楔が脈うち、媚肉に淡い振動を与え、媚肉はその振動を逃すまいと楔を締め付けた。   「動いてないのに、雅成の媚肉は俺のを締め付けてるぞ。それに楔からは蜜が滴り始めてる。挿入されているだけなのに感じてるのか?」  言われながら背中を指で撫でられると、腰が勝手に前後に揺れる。 「腰が揺れて……。やっぱり突き上げて欲しいのか? 弱いところをカリで引っ掛けて欲しいのか? ご褒美よりお仕置きされたいのか? お仕置きされたいから、わざと約束を破るっことをしたのか? 正直に言えば、溶けてしまいそうになるぐらい、愛してやるよ」  甘やかし、愛の言葉を囁かれ、抱かれる感触を身体が覚えていて、言葉で言われただけで達してしまいそうだ。  すぐにでも、全てしてほしい。  でもお仕置きをされたくて、シャツだけの姿で拓海を探したんじゃない。  早く拓海に抱きしめてもらいたかったから、とりあえず床にベッドの上に脱ぎ捨てられていたシャツを着ただけだ。  誤解されたまま抱かれるのは嫌だ。 「ちが……うっ……。拓海の……バカ……」    目に涙を浮かべながら、振り向き拓海を睨みつける。 「目覚めて……一番に、拓海に……抱きしめて、もらいたかった……から、拓海を、探しに……急いで……シャツを、着ただけ……。何か……口実をつけたい……訳じゃ…ない……。抱いて……欲しい、時は……ちゃんと……言う……」  拓海に貫かれながら、途切れ途切れに反論する。  今回、約束を守れなかったのは雅成(自分)が悪いのはわかっているし、もうしないと約束をした。  雅成が約束をわざと破ったかのようにいい、当てつけのようにしている今の行為は、拓海が悪い。 「拓海……とは……愛され、ながら……抱き合い、たい……」  目に溜まっていた涙が、雅成の頬を伝う。  拓海はハッとして楔を抜くと、雅成を床に下ろした。  雅成ははぁはぁと肩で息をする。  拓馬は前からに雅成を抱きしめた。 「ごめん……」  苦しそうな表情で、雅成の目をまっすぐに見つめる。 「俺はただ、雅成に怖い目にあって欲しくないだけなんだ。それに……」 「それに?」 「雅成のそんな姿、誰にもみられたくない… …」  闇オークションでは、もっと過激な行為をたくさんの客の前でしていが、その他の時は雅成の妖艶な姿を、誰にも見られたくないと拓海は言った。 「そんなことを思っていてくれてたなんて。僕こそ拓海の気持ちを分かってなくて、軽率な行動をとってごめんなさい」  互いに謝りあって、少し笑った。 「今回は僕の行為で拓海に嫌な思いをさせてしまったから、今日は拓海がしたいことだけしよう」  もしかしたら、このまま抱かれるのかな? と思っていた雅成だったが、拓海からのお願いは意外なもの。  『デートがしたい』だった。

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