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第25話 余命半年 ①
なんとか人だかりから逃げ出し、家路についている最中、拓海のスマホが鳴った。
発信者は嶺塚。
必ず一人で闇オークションの本部に来るようにと拓海が呼び出され、雅成は一人マンションで留守番をすることになった。
デート中の呼び出しで雅成を家に送って、拓海はすぐに出掛ける。
一人ポツンと残された雅成は、デートに連れて行ってくれた嬉しい気持ちを拓海に伝えたくて、夕飯を作って待つことにした。
以前冷凍の絶品ハンバーグをお取り寄せしたのを思い出し、メインはハンバーグ。
スープも粉末にお湯を注ぐモノ。
お湯の代わりにホットミルクにすると美味しいと聞き、今回はホットミルクを使うことに決める。
せめて何か料理らしいものをと思い、ポテトサラダをネットの動画レシピを見て作ることにした。
「ジャガイモはお水から茹でること……と」
たっぷりの水が入った鍋の中に、きれいに洗ったジャガイモを入れ、火にかける。
輪切りに切ったはずのきゅうりは、やはりというべきか繋がっていたので、繋がっている部分を一つずつ手で切り離した。
ハムも切っておこうと思い冷蔵庫を開けると、今日のサンドイッチに全部使ってしまったこのに気づく。
拓海が帰ってくるまでにハムと、ついでに美味しそうな赤ワインでも買ってこようと、拓海との約束を守るべくきちんと した服装に伊達メガネとマスク。長い髪はまとめて帽子の中に入れた。
ジャガイモを茹でていた火を消したことを確認し、部屋を出ようとした時、
ー ピンポーン ー
インターホンの音が鳴った。
居留守を使おうかとモニターを見ると、
「お義祖父様 」
そこには嶺塚と森本、二人の護衛の姿があった。
慌ててエントラスと部屋の鍵を開ける。
「どこかに行く予定でもあったんか? 連絡もなく急にすまんな」
滅多なことでは相手を気遣う言葉を言わない嶺塚が、急な訪問に詫びをいれる。
「いえ、とんでもないです。お義祖父様が来てくださって、嬉しいです」
2年住んでいて、雅成と拓海の部屋に訪れた客人は今回が初めて。
念の為用意していた客人用のティーポットに高級茶葉を入れて、紅茶を振る舞う。
差し出された紅茶を手に手を伸ばし香を楽しんだ後、飲んだのは嶺塚だけ。
他の者は手をつけず、ことの成り行きを見守っているような感じがした。
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