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第28話 余命半年 ④

「女神はやめてもええ」 「え?」  あれほど雅成が女神であることに執着していた嶺塚の言葉とは思えない。 「女神やめて、拓海と伴侶の契りを解消して、拓海と二人、どこか静かなところで暮らしたらええ」  半年後、自分は死ぬ。  女神を辞め、拓海と二人だけで過ごせる。  雅成が夢にまで見たこと。  絶対にかなわぬ夢だと思っていたこと。  今、嶺塚はそれを全て叶えてやってもいいと言っている。  どうしたいか雅成が決めればいいと、言っている。  夢なのかもと思った。  嘘かとも思った。  夢でも嘘でもよかった。  今、目の前にいる嶺塚の気が変わらなうちに言わないと!  言ってしまわないと! 「僕は、女神を……」  そこまで言った時、 「でも新しい伴侶を受け入れて女神を続けるやったら、余命は少し伸びる」  嶺塚の口から予想しなかった言葉が飛び出してきた。 「それは……どういう……ことです、か?」  先ほど嶺塚は、雅成の病には治療法も特効薬もないと言った。  しかし今、新しい伴侶を受け入れれば、余命は伸びると言った。  全く話の筋がわからない。 「雅成の病に特効薬はない。でも一番最適な伴侶の精液を体内に取り込めば、寿命が伸びていくのがわかってきたんや。立証されてはないけれど試してみる価値はあると、わしは思う」 「……」  拓海以外の精が体内に入る。  考えただけでも悪寒がする。  でもそうすることで寿命が伸びるかもしれない。  拓海との時間が伸びるかもしれない。  かもしれない。  確実なことではない。  確実ではないけれど、成功する可能性は捨てたくない。 「僕は……僕は……」  拓海との静かな余命を選ぶなら、今伝えておかないといけない。  そう思う反面、新しい伴侶を受け入れ、少しでも拓海との時間を増やしたい。  拓海の笑顔が浮かぶ。 (死にたくない! 死にたくない! まだ、ずっと拓海のそばにいたい! でも……) 「拓海が伴侶でなくなれば、お前の拓海への気持ちは伝えられる。いつ、どんなときでも、どんな場所でも、気持ちを『愛してる』を伝えられる」 「!!」 「答えは急がへん、よ〜考え」 「これからは雅成の思うように、好きやなようにしたらええ。好きに生きたらええ。辛い思いばかりさせて、悪かった。すまん。この通りや」  嶺塚は雅成に深く頭を下げて帰って行った。

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