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第29話 葛藤 ①
山の奥深く。紅、黄色、緑の自然美で彩られた紅葉が見渡せる露天岩風呂の乳白色の湯船に、紅葉が数枚浮かぶ。
バシャバシャと湯船が波打つたびに紅葉も波に合わせて上下した。
「ア…あぁぁ……拓海…そこ……そこ、もっと……あ、ああぁぁ……ッ」
岩風呂のへりに手をつき、双丘を突き出して、媚肉を凶器のような太く硬い拓海の楔に貫かれ、雅成は背中を限界まで反らせ、達した。
雅成は拓海に、もう何度もイかされたのだろう。
はぁはぁと肩で息をしていると、拓海が挿入したまま雅成の顎をクイッと摘み上げ、深い深いキスをする。
もう蜜は出ないと思っていたのに、また蜜が楔の根元に集まり熱くなる。
湯にのぼせたのか、拓海のキスにのぼせたのか頭が真っ白になって、倒れそうになったのを拓海が支えた。
「ごめん……。やりすぎた……」
ぐったりする雅成の中から楔を抜き、雅成と向かい合うように抱き上げると、湯船のヘリに座わる。
先ほどまで雅成を突き上げていた楔が抜かれると、お腹の奥が寂しい。
「いや……」
ぼーっとする頭で雅成は、
「抜いちゃ……やだ……」
拓海の胸に顔を埋めより抱きついた。
「ずっと……繋がって……いたい……。抜かない、で……」
すがるように雅成は拓海を見上げる。
「どうした? なにかあった?」
いつもの拓海なら、すぐに雅成の願いを叶えてくれるが、今日の雅成はひとときも拓海から離れたがらず、抜かずにずっと繋がっていたいと言う。
貫かれて声が枯れても、なおも求める。
雅成になにかあった。何かおかしいと拓海が気がつくのは当然のことだ。
「何かあったのなら聞かせて。俺は雅成の味方だよ」
拓海は雅成の願い通り再び楔を挿入し、対面になるように膝の上に座らせると、そのままの体勢でできるだけ優しく雅成に語りかける。
「……」
雅成は何か言いたそうにしているが、口を開こうとせず、悲しそうにしたを向くだけ。
「言いたくない? それとも言えない?」
うつくむ雅成の顔を拓海が覗き込むと、瞳に溜まった涙がポトリと落ちた。
「愛してるよ雅成。だからどうか話……」
拓海が言いかけた時、
「突いて……」
雅成が拓海の首にしがみつき、肩に顔を埋めた。
「お願い突いて……。僕が気を失うまで。何もかも忘れられるまで……」
顔は拓海からは見えないが、雅成の啜り泣く声が聞こえた。
「愛してる雅成。愛してる……」
埋められた雅成の頭にキスをすると、拓海は小刻みに雅成を労るように下から突き上げる。
「あっ……ぁっ……あっ……」
最奥の壁を押し上げられるたび、雅成の短い声が漏れる。
今まで何度も拓海と繋がり一つになって、中を拓海の形に変えられたのに、雅成の媚肉は今もなお、初めて繋がった時のように拓海の形を覚えようと楔を締め付ける。
「愛してるよ雅成。愛してる……」
言い聞かせ、雅成の心と体に刷り込むように拓海は突き上げるたびに囁く。
「はぁぁぁ……ぁぁ……拓…海……僕、も……僕も……あ、い……」
雅成はそこまで言いかけ、口に両手を当て言葉を飲み込んだ。
「雅成?」
律動をやめ、拓海が雅成の顔を覗き込む。
「なに? 何を言おうとしたの?」
雅成の言葉、行動を一瞬たりとも見逃すまいと、拓海は雅成をじっと見つめた。
「……」
でも雅成からの返事は返ってこない。
「雅成?……っつ」
呼びかけたが、無言のまま雅成が腰を前後に動かしはじめ、拓海は小さく唸った。
「拓海の、精子がほしい……」
囁き拓海の耳を甘噛みする。
「拓海の……赤ちゃんが、ほしい……」
「!!」
拓海が息を呑む。
「拓海と……僕の赤ちゃんが、ほし……ひやあぁぁぁ……っ」
言い終わらないうちに、激しい突き上げが雅成を襲う。
甘やかされながら突かれるのでもなく、焦らすように強弱をつけた律動でもなく、お仕置きのように抱き潰すようなのでもなく、ただ荒々しく。
抑えられない欲求と気持ちを、雅成の中にぶつけるように突き上げる。
苦しいぐらいに感じる、乱暴なほどの拓海の気持ちを雅成は全身で受け止め、
(愛してる拓海。愛してる……)
なんども心の中で呟いた。
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