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第42話 すれ違い ①

 雅成が嶺塚の研究病棟で意識を取り戻したのは、拓海とルイと交わった3日後のことだった。  プレイ中意識がなくなった雅成は、その直後から高熱を出し、嶺塚が経営している病院に運び込まれた。  病院での検査では高熱の原因がわからず、拓海が強制的に帰宅させられた後、隣接している研究病棟に移された。  眠っている間に、ありとあらゆる検査がされたが、原因は不明。  だが推測される原因はわかった。 「細胞が活性化している?」  目覚め、研究病棟から普通の病棟に移された部屋で、再度検査結果を森本から聞かされた。 「はい。雅成様の以前のデーターと比較したところ、今まで何をしても細胞が衰えていっていたのに、今回初めて細胞の活性化が見られました!」  胸が躍るとばかりに、森本の声は弾んでいる。 「最適な伴侶の精を体内に取り込むことが、今までは延命治療法の仮説でしかありませんでしたが、今回の件で正しいと立証されたんです。雅成様の治療方法の突破口が開かれたんです」  タブレット端末内にあるデーターを見せられたが、専門的すぎて雅成にはよくわからない。  でもデーターを雅成に見せている森本の目が、希望で光り輝いているのをみて、気休めではなく本当のことだとわかった。 「できればこれから定期的にルイくんの精を摂取していただければ、体はますます良くなっていくことは間違い無いです」  延命治療法だけでも確立され、本当は喜ぶところだが、どうしても喜べない。  ルイの精が体内に入ったとき、体の中で何かが変わっていくのは感じた。  でも拓海以外を受け入れてしまったことへの罪悪感が膨れあがり、もう二度と拓海以外受け入れたくないと思っていた。 「どうしてもしないとダメですか?」 「え?」  想像していなかった言葉が返ってきたのか、森本は目を丸くする。 「僕、もう拓海以外嫌なんです。拓海以外を受け入れるたび、細胞は活性化するかもしれませんが、心はどんどん荒んでいくんです。拓海以外を受け入れ体が生き長らえても、心が死んでしまうなら、このまま消えてなくなりたいと思うんです」  余命半年を少しでも長らえさせるより、自分の愛する人とだけ身も心も結ばれていたかった。

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