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第53話 すれ違い 11
「……」
今まで見たことのない拓海に、恐ろしくて体が固まる。
「なぁ、聞いてるんだ……」
腹の底から出てきているような低い声。
「……」
「聞いてるんだ……聞いてるんだ雅成……答えろよ」
目を逸らさずすごまれる。
恐ろしすぎて、脈拍や息が上がる。
「雅成!!」
雅成の顔の両側の台を、バンッッと拓海が強く叩く。
恐怖から息が止まり、雅成の体の震えが止まらない。
「俺を裏切るなんて、許さない……」
拓海は雅成のシャツに手をかけ破った。
引きちぎられたボタンが宙を舞い、バラバラっと床に落ちていく。
「やめっ……ひやぁぁ……」
露わになった乳首をきつく吸われ、腰がビクンと跳ねた。
「拓海……怖い……やめ、て……」
震えながらも雅成が必死に言うと、
「裏切った雅成が悪い……」
両太ももを押し広げられ、内太ももを噛みつかれた。
鋭い痛みが太ももから走る。
「拓海、やだっ! やめ……あ、ああぁぁ……ッ!」
根本まで一気に楔を咥え込まれた。
乱暴に扱かれ、怖くて泣きそうなのに与えられる刺激に楔が反応し、拓海の口の中で立ち上がる。
先端を喉の奥まで咥えられ、拓海の口が上下するたびに、雅成の腰は跳ね上がり達する。
「ヤダッ……怖い……やめ、て……あああ、ぁぁぁあああ、ぁぁ……——!」
達しても達してもなお攻められる。
頭の先からつま先まで、恐ろしいまでの快楽が貫き雅成は足の指を内側に丸めた。
拓海の気がすむまで口淫され、やっと拓海の口から雅成の楔が離される。
が、次の瞬間、台の上に乱暴にうつ伏せにさせられた。
雅成の腰を拓海が掴むと蕾を慣らすことなく、楔を挿入する。
「痛いッ! ……痛い、拓海……ッ!」
雅成が倒れてから、拓海は雅成の体を心配して、雅成を抱かなかった。
2か月ほぐされていなかった蕾は、凶器のような拓海の楔を迎え入れるには締まりすぎていた。
「嫌っ! 嫌だッ! 拓海、やめ……て……」
雅成のことを全く考えていないような律動。
慣らされる前に挿入された時は痛みしかなかったが、今まで拓海に甘やかされてきた媚肉はすぐに拓海の形に変わり、激しいまでの悦楽に歓喜する。
「拓海……拓、海……ふあ、ああああぁぁぁ〜〜〜ッ」
腰を反らせ、雅成が達したと同時に、
「ッツ」
拓海が精を最奥のぶち当てる。
熱い、熱すぎる精は媚薬のように雅成の身体に広がり、またしても絶頂を迎えて、体を逸らしわなないた。
休むことなく拓海は律動し、雅成の中に精を放つ。
雅成の愛液と拓海の精が激しく混ざり、蕾からは二人の液が泡立ち雅成の太ももを流れていった。
何もわからず荒々しく抱かれ、何度目かの精を拓海が雅成の中に放つと、律動がぴたりと止まる。
ずるりと楔が抜かれると、今まで中で堰き止められていた精がドロドロと流れ出した。
ようやく解放されて放心していると、雅成の背中に拓海が覆い被さる。
「ごめん、雅成……。ごめん……」
背後から拓海の謝りながら啜り泣く声。
『大丈夫だよ』と言ってやりたかったが、荒い息で言葉がでない。
「見捨てないで。どこにも行かないで。嫌いに……嫌いにならないで……」
嗚咽が混じる。
雅成は力を振り絞り体を起こし、料理台の上で拓海と向き合うように座り直す。
「見捨てたり……しない。嫌いになんて……絶対にならない」
拓海の頬を掌で包み込み微笑む。
「愛してる……拓海。愛してる……」
体を伸ばし、拓海にキスをする。
舌を出して甘えれば、拓海が舌を絡ませ答えてくれる。
「もっと、愛して。拓海……」
震える拓海の手を自分の乳首に触れされた。
「俺で、いいの?」
不安で揺れる瞳で拓海は雅成を見つめる。
「拓海がいい。拓海じゃないと嫌だ。拓海しか、嫌なんだ……」
見つめ返した。
「雅成……どこにも行かないで……」
「……」
咄嗟には答えられなかった。
でも、
「愛してる、拓海。愛してる」
拓海の瞳から不安が消えるまで言い続けた。
「拓海、抱いて……」
両腕を伸ばすと、拓海は雅成を抱き上げ寝室に向かう。
ひんやりと冷たくなったベッドの上で二人は愛し合った。
不安そうに拓海が見つめれば、雅成は「愛してる」「絶対に嫌いになんてならない」と何度でも繰り返し囁く。
愛し合った後、拓海が眠りに落ちるまで、雅成は拓海の頭を撫で「大好きだよ」と何度も言った。
でも最後まで『どこにも行かないよ』とは言えなかった。
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