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第56話 真実 ③
拓海と過ごせるように病院のVIP病室に移動となった。
ホテルのような一室で、ちょっとした料理も作れるようなキッチンもある。
車椅子に乗った雅成は、楽な部屋着に着替えて病室の中を移動する。
「なんだかお義祖父様みたい」
わざとおどけて見せた。
拓海は毎日のように嶺塚と会っているが、雅成はあのオークション以来会っていない。
「お義祖父様の体調はどうなの?」
嶺塚の体調が良くないと拓海から聞き、近々見舞いに行こうと考えていた。
「ま〜ぼちぼちかな?」
まさか拓海の口から嶺塚のような言葉遣いが出てくるなど思っても見なかった雅成は、目を丸くする。
言葉が似る。
それだけその人と一緒にいる時間が長くなり、それだけ親密になったということ。
今までは嶺塚と拓海の間に溝のようなものがあったが、その溝が浅くなってきたのだと感じる。
もし自分がいなくなったとしても、拓海には肉親の嶺塚が身近にいてくれるかと思うと、少し安心した。
「拓海」
車椅子を押す拓海を雅成が見上げる。
「ん?」
「キスして」
キスを覚えたての子どものように、雅成は唇を尖らせてキスをねだる。
「あはは。なにそれ。変な顔」
そう言いながらも、拓海は雅成の前でしゃがみ頬を両手で包み込み、チュッと音を立ててキスをした。
「これでいい?」
拓海が聞くと、雅成は首を横に振り口を開けて舌を出す。
クククと拓海は笑い、
「仕方ないな〜」
雅成の下唇を甘噛みした後、誘われるように深いキスをする。
舌を絡め、互いの唾液が混じり合う。
(!!)
味がした。
甘く懐かしい味がした。
拓海の唾液の味がした。
何も感じられなくなっていた味覚なのに、拓海の味だけは忘れていなかった。
(やっぱり僕の本当の伴侶は拓海だ)
雅成はルイの香に誘われ、拒めなかった自分に負い目を感じていた。
拓海以外嫌なのに、求めてしまった自分が穢らわしかった。
でも拓海の味がして、やはり自分が求めているのは拓海だと確信できたのが嬉しかった。
涙が浮かび目尻から耳に涙が流れていく。
虚しかった体が満たされていくようだった。
「雅成?……わっ!」
異変を感じ取った拓海がキスを止めると、雅成は立ち上がり拓海を床に押し倒す。
「雅成?」
押し倒されたまま拓海が見上げると、雅成は無言のまま服を全て脱ぎ、四つん這いになると拓海の下半身の方に体を下げる。
「雅成、どうしたんだ?……っつ!」
拓海のパンツのチャックを下ろして、下着をずらすと雅成は楔を口に含む。
また味がした。
拓海の味が。
嬉しかった。
拓海の味がしたのも、自分の口の中で拓海の楔が大きく硬くなっていくのも。
夢中で拓海の楔を口内で扱く。
「ック……雅成、ダメだ……離せ……」
理性を振り絞り拓海は上半身を起き上がらせ、雅成の体を押し除けようとする。
だが雅成は拓海の楔を咥えたまま、自分の蕾に指を入れ中を広げていた。
視覚に雅成の艶かしい姿が飛び込んできて、拓海の理性は音を立てて崩れていく。
雅成の体を持ち上げ、自分の楔の上にほぐれた蕾をあてる。
まだ蕾や媚肉は少しほぐれていなかったが、いつもより中で拓海を感じられて、至福のため息が漏れた。
昨晩愛し合った二人の体は、すぐに合わさり絡み合う。
雅成が達し拓海の楔を締め付けると、中に精が注ぎ込まれる。
幸せと快楽が体に染み渡る。
自分は愛されていると、拓海を誰よりも愛していると感じる。
求めれば求めた以上に愛してくれる。
床で愛し合い、ベッドに運ばれ愛される。
幸せだった。
もう迷わないと思った。
拓海に全部打ち明けて、拓海しか受け入れたくないとを、だから余命があと4ヶ月しかないことを、伝えようと思った。
命が尽きるまで一緒にいてほしいと言おうと決めた。
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