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第77話 癒され、甘やかされ、蕩けてく ①
抱きしめられながら見上げると、拓海の視線とぶつかった。
互いに吸い寄せられるように顔を近づける。
唇と唇が触れ合った。
雅成がねだるように口を開くと、拓海の舌が口内に入り、舌と舌が絡み合う。
「ん、ぅ……ンン……ふぅ、ん……」
息をする間もなく、舌を根本から吸われ、上顎をくすぐられる。
拓海の唾液が流し込まれ、ゴクリと飲み込むと、媚薬が体内で広がるように痺れ出す。
ベッドに押し倒され、服を全て脱がされる。
深雪のような白い肌は、ほんのり火照り熱を持つ。
「拓海も、脱いで……」
拓海がニコリと微笑み、服を全て脱ぎ捨てる。
「抱いて……」
両手を広げると、拓海は雅成に覆い被さった。
肌と肌が重なり合い、一つになれる喜びが込み上げる。
雅成を気遣いながら、拓海は首筋から順に啄むようなキスを落とす。
優しく、時にキツく吸い、雅成の肌には花びらのような紅い痕を残しながら、胸の突起にたどり着く。
「あっ……」
軽く吸われた乳首から、淡い刺激が全身に響いた。
片方の乳首を舌先を尖らせ弾くように舐められ、もう片方の乳首を人差し指で押しつぶされ、楔から蜜が滲みはじる。
「ふぅぁ……あぁぁ……」
吸われたり、乳首の先を爪で引っ掻かれたり、捏ねられたり。
両方の乳首から違う刺激が与えられるたび、たまらなく感じてしまう。
だが欲している刺激はもっと違うもの。
激しくて、快楽が身体を貪り尽くすほどのもの。
腹の奥深くに拓海の楔を打ちつけてほしい。
なのに今の刺激は優しく、もどかしい。
「拓海、挿れて……」
雅成は身体を捻り双丘を突き出すと、拓海の手をとり蕾にあてる。
「拓海の楔で、貫いて……」
激しく激しく抱いて欲しかった。
激しく激しく貫かれながら、一つになりたかった。
身体に拓海を刻みつけて欲しかった。
そうしないと、また拓海と離れ離れになってしまわないかと不安になる。
拓海しか知らない身体を、また誰かに穢されそうになるかもしれない。
雅成の体は助け出されたが、心はまだ囚われたままだった。
「雅成。心配しなくても大丈夫。もう二度とあんな恐ろしいことはことは起きない。自分を自分で殺さないといけないことは、もう二度と起きない。大丈夫、俺がずっと傍にいて、ずっと雅成を守るよ。だから大丈夫」
拓海は雅成の目をじっと見つめながら、語りかける。
「一人でよく頑張ったね。もう大丈夫。大丈夫だよ雅成」
頭を撫でられ、胸が熱くなる。
氷山のように冷たく硬くなっていた心が、溶かされほぐれていくのがわかった。
暖かいものが流れてきて、急に目頭が熱くなる。
「僕……僕……怖かったんだ……」
「うん」
「毎日毎日、自分が穢れていくのがわかったんだ……」
「うん」
「でも、僕が頑張らないと……頑張らないとって……」
「うん」
「あんなヤツに、自慰を見せたんだ。拓海を思い浮かべながら、自慰したんだ」
「うん」
「僕は、拓海を汚したんだ。あんなヤツに見せるために、僕は拓海を汚したんだ」
「それは違うよ。違う」
「ううん、違わない。それに僕は拓海以外に貫かれるぐらいなら、死んでしまいたかった……。でも僕が死んだら、また犠牲者が増えるかもって……。だから抵抗もせずあいつに抱かれようとしたんだ……。僕は、僕は……最低なんだ!」
叫んだと同時に、拓海は雅成を痛いぐらいに
抱きしめた。
「最低なわけない! 雅成がいたから助けられたたくさんの人達がいる。雅成がいたから助かった命がたくさんある」
「……」
「あいつは人身売買の他に臓器売買もしてたんだ。雅成があいつの存在を教えてくれたから、助かった命がたくさんあるんだよ。雅成は尊いことをしたんだよ」
「……」
「生きていてくれて、ありがとう」
「……」
「これからは誰かのために何かをするんじゃなくて、自分のために生きて」
「……」
「愛してるよ雅成。愛してる……」
拓海はくり返しくり返し「愛してる」と囁きながら、雅成の全身にキスを落とす。
雅成の奥深くにまで侵食していた恐怖を取り除くように。
乳首を吸い、乳輪を舌先で撫でたり。
甘い声が雅成の口から発せられるたび、身体の力が抜けていく。
拓海の愛の中で溶けていく。
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