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第3話

「……」 ごくり、唾を飲み込んだ。 舐めたい。その斑点に舌を這わせたい。 飲み込んだ音がスウトに聞こえたのでは。そう心配になるくらいに、欲しいと思った。 「ね、ヤバいでしょう?」 「……」 「あの……?」 「──ハラ、へりませんか」 「……へっ?」 「検診で、食べられませんでしたよね、朝食」 「あ、ああ、確かに。いや本当、もうペコペコで……」 「でしたら一緒に、メシでもどうです? 奢りますよ、僕が」 「えっ?」 さすがにがっつき過ぎただろうか。スウトはキョロキョロ辺りを見渡し、え、俺? と言わんばかりに自分の顔を指さしている。 「いかがです? 有給取って検診来たはいいものの、あとは暇で。遊んでくれる人もいなくて。うまい店、紹介しますから」 「いや、でも……? あっいや、金は自分で払いますけど、けどいいんでしょうか、なんだかナンパみたいですねえ、アハハ」 「ナンパですよ」 「はっ?」 スウトは目をまん丸にしてしばし固まってから、盛大に吹き出した。 「面白い方ですね! いいですよ、俺でよければナンパされます。俺この辺詳しくないんで、宜しくお願いしますね」 俺と変わらないくらいの背丈はあるが、純粋な仔犬のように笑むスウトを横目に、僕が内心ほくそ笑んだことは言うまでもない。

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