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第4話

スウトを連れて訪れたのは、最近できたばかりの軽食店だ。軽食といっても侮るなかれ、値段の割にけっこうなボリュームがある。 平日の軽食店はすいていて都合が良かった。 床板や壁板にウォールナットのニスを塗った店内の雰囲気は、カジュアルでも落ち着いている。 そこら中の飾り棚から溢れた観葉植物が明るく空間を彩っていた。 スウトは気に入ってくれたらしく、窓側の席に座ると目を輝かせ、あちこち見回していた。 「で、どうです? 食べたいものは決まりました?」 「──まよ、ってしまいますね、どれも美味しそうで」 テーブルに広げたメニュー表には、各種サンドイッチorカツサンド&コーヒーのセットや、パスタ、ピザセットなどの写真が並んでいる。 それらを見比べながら、スウトはうーん、と唸った。 こんな調子でもう10分近くメニューと睨めっこしている。 投資家が株価を気にするような真剣な顔つきをして。 「もしよければ、僕のオススメで決めちゃいましょうか?」 お節介かもと思ったが、スウトは救われたように目を潤ませて、ぜひ! と言った。 オーダーを済ませると、やがてウェイターが玉子サンドと海老カツサンドを運んでテーブルに載せた。 スウトは、うわぁ!と驚嘆の声を上げた。 「ほんと凄いボリュームですね!写真で見た以上です。シェアしても食べ切れるかなぁ」 なんて不安そうに言っていた割には、ひと口かじれば虜になって、あれよあれよという間に胃袋に消えていく。 食べながら僕たちは、互いの名前や趣味やなんかを話して笑い合った。 「あんなにあったのに、意外と食べられるもんですね。深水さんのチョイスのお陰かな?」 深水(ふかみ)さん、か。できれば下の名前で呼んで欲しかったな。(さとる)、って。

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