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第8話

僕はさらに密着をして、スートの耳に息が掛かるのを意識して話した。 「──彼女を満足させられなくて自信を無くし、彼女はもっと、満足させてくれる男のところへ行ってしまった」 「な、」 「そうなんでしょう?」 スートは黙り込む。 僕は再びソファにもたれて、鷹揚に脚を組んだ。 「ねえ?違いますか」 「……い、え、……おっしゃる通り、です」 スートは耳まで真っ赤にしながら、怒ってもいい質問に答えた。 こんな華奢な身体つきをしてるのだから、ついているモノもお察しだ。 初めは顔につられて付き合った女も、その強欲なカラダを充分に満足させるには物足りなかったのだろう。 「……あの深水さ、……」 ふん、何が『好きな人ができた』だ。 『貴方のより良くて長持ちする男を見つけたから』って言えばいいだろ。 強欲のうえに狡くて、嫌な女だ。 「……すみません俺、初めて会った方に──こんな悩み打ち明けるの、おかしいと思うんですけど……」 魚が餌に食いついた。 「何でも聞きますよ、僕で良ければ」 「は、その、……おれ男として、自信がないんです。他の人より劣ってるの、わかっていますから。正直、もう、」 「女なんてこりごり?」 「──なんです」 「だったら」 テーブルの下で握られた拳に、そっと指を触れた。 「いっそのこと、男はどうです?」 「え、は⁉︎」 引っ込めようとする拳を強引に引き止め、その手の甲を指の腹でスリ、となぞった。 「っ、」 スートの目が潤み、声を漏らしかけた。 感じた?  まさかひと撫でで? 「いかがです、名案でしょ?」 「ぅ、……、っ……」 二度三度と撫でると、スートの頬は上気し、瞼はとじて──快感に耐えるように眉根を寄せ、半開きになった唇は、声を漏らさじと必死に耐えている。 黒のスラックスを突き上げる僕のモノが、痛いくらいに悲鳴を上げた。

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