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第13話

◇ だいたい保健所の健康診断なんてのは、忘れた頃に結果が届く。 あれだけめんどくさい検査をこなしても、今年も結果はたったひとこと『異常なし』で終わりだった。 梅雨入り手前の貴重な晴れの日、僕はスートを連れて駅前のイタリアンレストランに入り、パスタとピザを注文した。 互いに取り分けて食を楽しみながら、スートが午前中に観た映画の話をし始める。 「あれ、最後すっごい良かったですよね!? 俺もう感動しちゃって!」 涙ぐんで目を閉じ、しばしフォークの手を止めた。 さっき観た映画?  ええと、タイトルなんだっけ? 犬と人間のよくあるヒューマンストーリーだったが、後半はほぼ寝ていて、正直ほとんど覚えていない。 この手の映画は、見かけるたびにどんな精神構造のヤツが観るのかと思っていたが、なるほどお前みたいなやつなんだな。 「深水さんは、面白くなかった、ですか?」 「んっ?」 顔を上げると視線がぶつかった。 まずい、興味ない気持ちが伝わったか? 疑惑を払拭するために、記憶の引き出しを無理やりひねり出す。 「いや……面白かったですよ。あのなんか、犬? 白っぽい犬が」 「ぽん太です」 「そう、そいつが餌を食うシーンとか。あそこで何か、主人公のガキが」 「浩介です」 「そうそのガキが、いきなり何の脈絡もなく餌の缶持ってこっち向いて、『なんちゃら食品のドッグフードは美味しいね!』とか言って。スポンサーに媚びまくってんのがモロバレで、ウケました」 「深水さん……」 スートが不本意そうに表情を暗くする。 うん? 何か変なことでも言ったか? 「いや、いいんです。俺が観たいと言って、付き合ってもらったんだから。次は深水さんの好きなやつ観ましょ! どんなのが好きですか?」 「スプラッタ」 「うっ……。」

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