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第16話
◇
前日の夜はあまり眠れず、待ち合わせにした映画館の駐車場には二時間前に着いてしまった。
さすがに早いかと思ったが、なんとスートも停車していた。嬉しいような、どう受け止めて良いのか分からない気持ちになる。
そのスートが『タロット占いでもしませんか?』と言い出したのは、今期待望のスプラッタ映画を二人で観て、三回失神したあげくのスートをその場で介抱し、飯を食ったのちキレイめなホテルにしけこんで、ようよう会話も尽き果ててきた頃だった。
「占ぃい?」
「ですです!」
まだやるとも言っていないのに、スートはベッドに座り込んでワンショルダーのバッグから奇妙なカードデッキを取り出した。すぐ慣れた手つきでスタスタ切り始める。
「そういや、スートの名前もタロットから取ったとかなんとか……」
話しているうち、僕の方はいつしかタメ語になっていた。
「あっそうそう、そうなんです! 嬉しい、覚えててくれたなんて。そうですね、ではまず、占う前にお互いの性質でも見ましょうか」
「性質?」
「はい、スートって棒と剣と聖杯と金貨の4種類あって、それぞれにつき13枚のカードがあるんですけど、例えば棒は男性的で活力がある性質とか、金貨ならば勤勉とか、そういうのが分かるんですよ」
「ほぉ……?」
「なんて言っても、まあ占いは現状に対するアドバイスに過ぎませんから。行動によっていくらでも未来は変えられるので、あくまで参考程度に聞いて下さいね」
「おう」
「ではいきます」
スートが再びカードを切り始める。すると切り方が雑でもないのに、幾つかのカードがピンピンと飛び出した。
「おお、なんか来たぞ?」
「ジャンピングカードって言うんです。人によっていろんな占い方があるんですけど、俺はこれが一番好きで」
言いながらテキパキとカードを表返していく。
「あ、わ、凄い!」
「ああ? なにが」
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