20 / 26
第20話
「いや、ちょっと本当に待て。というか教えてくれ」
「なっ、なん……」
「そう、お前と出会ってからなんだよ! 今まで誰ともこっちから会いたいなんて思ったことねえのに、もう今はお前と会いたくて仕方ねぇ。他のやつのことは、お前が嫌だってんなら全部切る! 仕事してても寝てても頭ん中お前のことばっかりで、これ何んだ、病気か? 病気なのか?むしろ何科に行けばいいと思う!? やっぱり精神科だろうか!」
「えっあの……」
「ああそうだ、占い!この妙にソワソワした気持ちが何なのかを占ってくれ! 頼む‼︎」
「…………ぶッ」
一気にまくしたてると、スートはふいに前屈した。ふふ、くくくと笑い声を漏らす。
「何だよ、お前まで笑うのかよ? ダチにも散々笑われたのに。そんなにおかしな病気なのか?」
「ハ、あはっ、あははは」
スートは笑っていた。泣きながら腹を抱えて。
「深水さんって……」
「何だよ」
「バカなんだ」
「な、……」
「俺はね、好きでしたよ」
「はっ?」
「付き合ってた頃は、前の彼女のことちゃんと好きでした」
「だから?」
「……だから」
すっと近づいたスートの唇が、唇に触れた。
「……本気の恋 に関しては、俺の方がずっと上です」
そう言ってニヤッと笑んだ。
「……っ」
ぶわっ! っと音がするかと思うほど頭に血が昇り、思わず離れて口もとを拳で覆った。
何だコレ、何だコレ、何だコレ──!?
体の奥からマグマが噴き出したような、心臓がいきなりブッ壊れたような。
スートはなおもおかしげに笑っている。
よく分からない。分からないが、もう怒っていないのか?
向こうからキスをしてきた、ということはそう、怒っていない? つまりまた触れてもいいってことか!?
気がついた時にはもう胸の中にスートがいた。
「ちょ、ふか、ゲホッ……」
無我夢中で抱きしめて、首もとに顔を埋め込む。肌の香りを吸い込むと、ほのかに甘い香りがする。誘われるままに首筋を噛んだ。
ともだちにシェアしよう!