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第21話
スートの肩がぴくんと上がった。
吸い上げて皮膚を味わい、滲んだキスマークに満足を得る。が──、
「なんだ、これ……?」
シャツの襟の隙間に、赤い傷痕のようなものが見えた。しかも複数個。
気になってシャツを脱がそうとした、途端にスートはシャツの合わせ目を押さえ、抗うそぶりをみせた。
よくよく見れば、汗ばむ陽気なのに最上段まできっちりと掛けられたシャツのボタン。
まるで秘密を隠すように。
「見せろ」
「い、嫌です」
そう言われても引き下がれない。
「いいから見せろ!」
シャツを握る両手首を片手で押さえ込み、利き手で強引にボタンに触れた。
ひとつ、ふたつまでボタンを外して、白いシャツを左右に開く。
そこにあったのは、シルバーと赤の二重に掛けられたネックレス──ではなく、シルバーのチェーンの影をそっくりトレースするかのように、赤く腫れて無数に繋がっている発疹の轍 だった。
「これ──、どうしたんだよ!?」
肩をつかんで詰め寄る。スートは首元を隠して縮こまった。
「しっ、心配しないでください、ただの、金属アレルギーですから……」
「アレルギー……?」
「別にほんと、大したことはないんです! 特定の金属に触れると少し炎症したり、バリウムが飲めないくらいで……」
「……」
金属アレルギー。
あまり馴染みのない言葉だが、そういえば昔そんなことを言っているやつがいたかもしれない。
『いいよなー、お前らはよぉ。俺なんかすぐこれだぜ?』
分かっていながら無理につけて、あげく掻き壊して血が滲んだ手首。
スートのそれは、あの時のダチより酷かった。
「バカ、ならとっととネックレス外せ!」
「嫌です」
「はぁ?何で」
「何でって、だって……」
スートは、フェザー型のペンダントトップをキュッと握りしめた。
それを贈った時に見せた幸せそうな熱視線を思い出して、たまらなくなる。
……何でそんなに可愛いんだよ、クソッ。
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