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第23話
発疹の連鎖を舌でキレイになぞる。胸元の真ん中に浮かぶフェザー型のそれは、ことさら丹念に舐め回した。
裂けた皮膚に舌が触れるたび、華奢な体は小さく揺れた。痛いのだろう、痛いはずだ。分かっているのに止められなかった。
「……は、……っ」
やがて小さな唇が、痛みとは違う声を漏らし始めた。ただでさえ敏感な肌だ。
炎症を起こした痕は、ほんの僅かな刺激にも鋭敏に反応する。
僕はますますその遊戯に熱中した。
酷いことをしている自覚はある。
酷い? でも動物は、舐めて互いの傷を癒すと言うじゃないか。……
「っあ、深水さ……っ」
ガクンとスートの膝が折れ、壁にもたれ掛かった。
くの字になった体を横抱きに抱いてベッドに向かう。
真っ白いシーツの上にはタロットカードが散らばっている。構わずにスートを横たえた。
清潔なベッドの上で紫色の光沢をはなつカードの重なり。その中心に、生贄のように放られたスート。華奢な白い首もとには、無数に焼きごてを当てたような血色のネックレス。
まるで儀式のようだ。
ごくり……喉がまた、ひとりでに上下した。
もう無理だ、止まらない。
気絶しても許さない。呼び戻すための強い酒を持ってきている。
その酒、傷口に塗ってやろうか。たとえば消毒と偽って。
きっと痺れるような痛みが走るだろう──。
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