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第4話 夏秋冬春…夏
永吉と友人になって、樹は毎日が楽しい日々だった。
休日は永吉の年季の入った大きな一軒家でゴロゴロしながら二人で過ごし、時々、永吉の父親が栽培している畑の手伝いをして汗を流した。
それは全て初めての体験で、楽しいの言葉しか無かった。
だから、いつもよりも秋が来るのが早かった。そして、冬が来るのも、春が来るのも、全てが早かった。
「なぁ、樹」
「んー? なに?」
春になり、樹達は3年に進級した。
新学期が始まって直ぐの事。永吉の部屋で二人で勉強をしていると、永吉が勉強に飽きてしまい、寝始めた。それを見て、樹も隣で寝始める。
すると、突然背を向けていた永吉がこっちを見て樹に言う。
「昨日、お前よし子に告白されただろ」
「え!? なんで知って……」
「俺に知らない事はない」
そう言われ。そうかと樹は思った。
永吉は男女共に好かれている。つまりは、とても仲も良い。
樹が一番仲良くしている永吉に、よし子やよし子の友人が相談と言って色々と話しをしたのだろう。
まさか、こんなに早く永吉の耳に入るなんてと、樹は驚いてしまう。
「振ったんだって?」
「……。まぁ、良い子だけど……好きではないから」
それに、また夏が来たら違う所に行く。だから、付き合ったって相手を悲しませるだけだと思っている樹は、誰に告白をされても首を縦に振る事は一度も無かった。
「好きではないねー」
「うん……」
誰かとずっと、なんて今まで思った事も、考えた事もなかった。
樹には誰かと恋愛なんて程遠い。
人にそこまで執着がないのだから。
でも……。
「じゃ、俺は?」
「え……?」
「俺の事は?」
「えっ! なにっ、急に!」
急に永吉が真顔でそんな事を言い出した。その言葉に樹は戸惑い、赤面してしまう。
そんな樹を見て永吉は優しく笑い、突然樹の頭をガシガシっと掻き始めた。
「ちょっ、待って、急になに!?」
「ハハハッ。直ぐに答えろよー」
そう言って、永吉は自身の金髪の前髪を掻き分ける。
その仕草に、樹はいつも目を奪われる。掻き分けるその瞬間。永吉の整った顔がハッキリと見えるのだ。
それに、掻き分けるその仕草がカッコよくて、いつもとは違う永吉を見ているようで見惚れた。
樹は、認めては駄目だと思っていた物が弾けてしまうのを心の中で感じてしまう。
(なんでそんな事聞いて来たの……?)
もうすぐ夏が来るのに。
樹は永吉のその言葉に、さっきまで覚えた英単語を全て忘れてしまうのだった。
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