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第3話

そんなある日、退院も近くなってきた最中、 父がお見舞いに来ている時に蒼もやってきた。 「日向ー!今日も来たよ! てあれ?お父さん?」 「うん、そう。 お父さん。この子前に話した仲良くしてくれてる子。 蒼って言うんだ」 僕が紹介すると、蒼は一つ頭を下げた。 「朝霧蒼です!」 父は少しだけ驚いたような顔をして、 その後に柔らかく笑った。 「そうか、仲良くしてくれてありがとう」 「僕の方がありがとうなんだ。 日向といると楽しいから」 父は少しだけ目を細め何やら考えるような表情をしていた。 あまり父のこういった顔は見たことがないから、不思議だ。 「そうか。少しだけ退院の話があるから部屋出ていてくれる?また来てあげて」 「分かった!じゃあトイレ行ってまた来るね!」 蒼は僕に向かって手を振り、 僕もまた、ゆっくりと振り返す。 蒼が出ていくと、父は息を吐いて僕を見た。 「良いか奏。 今回の検査でお前はΩであることが分かった。 ごめんな。これから苦労することもたくさんあると思う。 それでだ。あの子朝霧と言ったな」 「うん。お父さんがこの病院で働いているんだって」 「朝霧の家は、この辺りでは有名なαの家系だ。 お前が仲良くするとお前もさっきの男の子も傷付くことになる」 α、β、Ω。 小学校の授業で習ったことがある。 αとΩが番という関係になることが出来て、 一生を共にすることができるとその中では言っていた。 「僕がΩで蒼がαならずっと一緒にいられるんじゃないの?」 父が何かとんでもないものを聞いてしまったような表情で眉を顰める。 「ダメだ。 残念だけど世界はそんなに簡単なものじゃない。 特に蒼君の家はα同士でしか結婚しない名家だ。 彼に期待をさせないためにも、間違いがおきないためにも、離れなさい」 心の中がもやもやした。 蒼といると他の誰からも感じることができない温かさがあるのに、 それなのに、どうして離れないといけないのか。 Ωだからとかαだからとか、よくわからなかった。 ただそれよりも僕の中に刺さったのは、 “蒼に迷惑をかけたくない”ことと “蒼を傷付けたくない”ということだった。 「僕といると、蒼は困るの?」 「あぁ、必ず困ることになる。 奏もだ」 理解は全く出来ていなかった。 ただ、一緒にいると良くないと言われていることだけは分かる。

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