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第7話 1章 美しい青年の秘密
彰吾の作った食事は、思った通り美味しかった。全部は無理だが、かなりの量を食べることができた。
「ごちそうさまでした」
「ああ、うまかったか?」
「はい、美味しかったです」
「そうか、量も結構食べられて、偉いな」
褒められると照れる。だいたい、食事をしたくらいで褒められるなんて……。そして青年は、気になっていたことを聞かねばと思い出す。
「あ、あのベッドは一つしか無いのですか?」
「そうだ、俺は一人暮らしだからな」
「あの、じゃあ、あなたはどこで寝るのですか?」
「俺はソファーで寝る。お前が心配することはない。基本医者なんてどこでも寝られなければ務まらないからな。病院の仮眠室のベッドと大差ない」
結局この夜も、遠慮して自分がソファーで寝るという青年を、強引にベッドで休ませた。彰吾にとってもその方が安心でもあるのだ。
青年の中に、死ぬことから離れる気持ちが芽生えていた。しかし、そのことに当の本人は気付いていないが、彰吾は気付いていた。
彰吾にとっては一番の山は越えた思いだった。自殺は、ある意味勢いがいる行為だ。死のうとしたその時を逃すと、中々次の機会が難しいのは確かにある事だった。勿論、思い詰めて何度失敗しても、繰り返す者はいるが、それは勢いが衰えていない時だ。しかし、この青年には、その勢いが断ち切られつつあるのを感じる。いい傾向だと思う。
無論それは、いつ復活するとも限らない。それに対しては注意が必要なのは言うまでもないと、彰吾は自分に言い聞かせる。
この日彰吾は、青年の服を何着かネットで注文した。確実に大丈夫と判断したら、その服を着せて外へも連れて行きたいと思う。早くそうなればとの思いも込めて注文した。
同時に簡易ベッドも注文した。ソファーよりは体を伸ばして寝られる。多分、これは長丁場になる予感がする。いずれは、一緒にベッドで寝たいが、それはまだ当分先のことだし、そうなればあのベッドでは小さいな……などと先走ったことも考えた。
いや、それこそまだ早いだろう。彰吾は、自分の気持ちが浮き立っているのを感じていた。これは、多分、きっと、恋かもしれない。
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