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第3話
きっかけなんてのはその程度のものだ。
地面に寝転び、太陽の光を全身で浴びる。
心地良い温度に目を閉じた。
「俺さぁ、日焼けすると真っ赤になんだよね」
「え…、そんな日光浴びてて大丈夫なの…?」
「大丈夫。
赤くなって風呂沁みるだけ。
けど、太陽の光りはあったかくて好きだからなぁ」
「それは大丈夫になんのか…?」
他愛もない話をポツリ、ポツリ、と交わしていく内に仲良くなった。
隣に寝転ぶ同級生の名前は、佐々木悠生。
クラスは当ててみてと言われた。
その時の無邪気な顔に、俺は少し救われた。
なんで屋上の鍵が壊れているのかとか、なんで屋上にいたのかとか、そんなことはどうでも良くなった。
言いたくないことがあるのはお互い様だ。
「大丈夫、大丈夫。
日向は、あの太陽が名前の由来?」
「うん。
真っ青に晴れた日に生まれたから、日向。
ま、陰キャだけどな」
「陰キャとか陽キャとか気にすることはねぇよ。
キャラなんて、キャラでしかねぇんだから。
人格の設定じゃねぇよ」
希望を込められた名前に反する今の自分。
だからこそ、親にも相談出来なかった。
恥ずかしい子だと思われたくないから。
なのに、悠生には素直に話せた。
透明人間なのも、悪口を言われているのも。
恥ずかしいとか思わず素直に口を衝いた。
話していく内に、悠生の隣が居心地良くなり、居場所になった。
悠生は、俺の太陽だ。
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