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残香2*
その夜。
レオネは寝る前に書斎机の引き出しを開け、タオルの包みを取り出した。クローゼットやベッドの中ではマルタに気付かれそうだし、誰も開けないのは書斎机くらいだった。
包みを持ち寝室へ向かう。物凄く悪い事をしている気分だ。
ベッドに上がり、天蓋の幕を下ろす。タオルの包みの前にガウン一枚の姿で座り、そっとタオルを捲り剥がした。かなり皺が寄ってしまったシャツを持ち顔を埋めると、今朝と同じ香りがレオネの鼻腔をくすぐってきた。
抱きしめても肉感の無いペラペラのシャツだが、それをジェラルド本人のように妄想して抱き寄せ顔を擦り付ける。強い匂いを感じ、舌を這わせると生地の食感しかしないのにひどく興奮した。同時にガウンの合わせから昂った自身を握り締める。
「ん……はぁ……ジェラルド……」
本人に見られたら絶対軽蔑されるし、もうここには居られなくなる。だけど止められない。
「あ、あっ……んんっ……!」
レオネは自身でも驚くほど早く達してしまった。ここ一年、ペニスへの刺激だけで射精できたことが無かったのに。
「ジェラルドっ……」
淋しさがこみあげ涙がこぼれた。ジェラルドの気配だけで達っしてしまうほど彼を欲している。
ソニアはレオネがジェラルドに好きだと言えば丸く収まると言っていた。今すぐジェラルドの寝室に行き、彼に愛してると、抱いてくれと言いたい。だがレオネが一番恐れているのはジェラルドに嫌われる事だった。ふしだらだと軽蔑されたくない。エレナと過ごしただろう寝室に自分なんかが入って言い訳無いのだ。だから我慢しなくては。もうジェラルドの側に居られるだけで良いのだ。その思いの方が強かった。
レオネはガウンを脱ぎ全裸になるとジェラルドのシャツに袖を通した。全身がジェラルドの香りに包まれる。シャツは肩幅がレオネよりだいぶ広く、袖も少し長い。
「はぁ……」
レオネはシャツの生地の上からプツンと勃ちあがった両胸の突起を両手で撫でた。
「はぁんっ!」
布越しにクリクリと刺激する。直での刺激より感触が柔らかになり余計に強く弾いたり潰したりしてしまう。さらに気持ちよさに腰が揺れ、ふと見ると先程の放ったもので濡れたペニスにシャツの裾が張り付いていた。そこは再び勃ち上がりシャツを押し上げている。シャツごとそれを握り込み扱く。
「んっ!あぁんっ……ジェ……ルドぉ……」
夢中になり声が段々と抑えられなくなる。こんなの絶対に誰にも聞かれたくないのに、誰かに、もしかしたらジェラルドに聞かれるかもと思うとより興奮してしまう。
夢の中でジェラルドに貫かれた後ろの蕾がうずく。現実ではまだ指しか入れられたことが無いそこは、夢ではもう数え切れないほどジェラルドを受け入れてきた。子種を注がれ身籠る夢まで見た。
(欲しい……ここでジェラルドと繋がりたい!)
レオネは身を起こし膝立ちになり右手を嘗め濡らすと尻の割れ目に手を伸ばし、穴の縁をぬるぬると指で撫でる。初めての夜にジェラルドが自身のモノでここを撫でた感触を必死に思い出す。
中指を第二関節くらいまで入れ、中でゆるゆると動かす。
「はぁ、はあぁん……」
それと同時に左手で前も刺激する。利き手でないので上手く快感を引き出せずいつも苦労する。
ジェラルドの香りを全身に纏い、あの初めての夜の光景を必死で思い出し追う。もう何度も夢や妄想で擦られた記憶はどこまでが現実だったのか曖昧になってきていた。それが彼の香りにより鮮明に呼び起こされる。
「ああ、ジェラ……ド! ジェ…らルドぉ……」
胸の二つの飾りがかまって欲しいとシャツを押し上げツンと主張していた。どこかに擦り付けたくてあたり探すと、蔓薔薇の装飾が入った天蓋の支柱に目が止まった。支柱に身を寄せ、シャツ越しに勃った肉芽をその支柱に擦り当てる。
「んっ、んぁ……」
ひんやりとした金属がシャツ越しに胸を刺激してくる。ボコボコとした感触もより強い快楽をもたらして来た。レオネは再び、両手で下半身の前後を刺激しながら、乳首を支柱に擦り付け続けた。
「あっ、あっ、ぁあんっ」
レオネの動きによって天蓋がキシキシと微かに鳴った。
「はっ、あんっ!……んんっ!」
レオネが快楽の絶頂を極め、前から蜜が再び吹き出した。ジェラルドのシャツごと握り込んでいたので、吐き出した白濁の露はシャツを濡らしていく。
はぁはぁと荒く呼吸をしていると徐々にに頭が冷えて冴えていく。
自分の着ていたシャツの匂いを嗅がれ、袖を通し性器を擦り付けられ、精液で汚されていると、もしもジェラルドに知られたらどうなるだろうか。きっと軽蔑されて罵られて『出て行け!』と言われるだろう。
フラフラと体勢を整えシャツを脱ぎガウンを羽織る。
(こんなことはもうやめよう……)
ソニアの好意に甘えてしまったがやはり人の物を好き勝手にするのは良くない。しかもこんな一方的に性欲の捌け口にするなんて。
レオネはシャツを持ってバスルームに行き、洗面台に水を溜め、自身の精液で汚れたシャツをザブザブと洗った。
ふと顔を上げると鏡に泣きそうな自身の顔が映っていた。
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