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[41] 赤紐
「なあレオネ。私になら何されても良いって言ったよな」
ジェラルドが優しげな顔で過激なことを聞いてくる。だがレオネは迷わず頷いた。
「ん……、じゃあちょっと待ってろ」
ジェラルドはそう言ってレオネの頬を撫でるとベッドから降りて寝室から出ていった。一人残され全裸の身体を丸めてジェラルドを待つ。
ジェラルドはすぐに戻ってきた。手には赤い紐を持っていた。以前商品見本だと言っていた太さの違う絹の装飾用の紐だ。太いものは紐というより縄という方が正しいかもしれない。
「これで君を縛って痕をつけ直したい。良いか?」
レオネはカッと身体が熱くなるのを感じた。だが拒む理由は無い。
「……はい。お願いします」
ジェラルドはレオネの両手首を掴み頭上へ上げると一番太い紐で天蓋支柱へと縛り付けた。
あの園芸小屋での姿勢と同じになりレオネにザワッと不安感が忍び寄る。レオネはその不快感に耐えようときつく目を閉じ顔をそらした。
ジェラルドの手が左脚にかかり、膝を折り曲げ太腿と脛を結ぶ。さらに右足首にも紐を結ばれたが、ジェラルドは何処かに縛り付けることはしなかった。
「レオネ」
ジェラルドがレオネの名を囁やき、頬にキスを落とす。レオネはジェラルドの声に少しホッとした。レオネの首筋を撫でたジェラルドの手がゆっくり滑りレオネの胸の突起に触れた。
「うっ……!」
レオネが唸り身体がビクッと震えた。腕を縛り付けられた天蓋が軋み音を立てる。レオネの口からガチガチと歯が鳴る音が漏れ出た。
(どうしよう……怖い……!)
相手がジェラルドだと頭では分かっているのに、身体が勝手にあの日の記憶を呼び起こす。
「レオネ。私を見ろ」
ジェラルドが震えるレオネの頬を撫で、反らしていた顔を自分の方へと向かせる。
レオネが目を開けるとジェラルドの黒い瞳がそこにあった。
「はぁ……ジェラルド……」
ジェラルドはレオネの目尻に溜まった涙を拭うと、レオネの上体を少し起こし背中に枕とクッションを押し込んだ。上体が起こされたことによりレオネの視界に自身の身体が映る。
脚に結ばれた真っ赤な絹の紐。そして自身が横たわるのは園芸小屋の藁束の上ではなく、ジェラルドの寝室でありジェラルドのベッドだ。
全裸の自分と対比するようにカフスボタンまでしっかり留めたシャツとベスト姿のジェラルドがレオネの横に座る。
「レオネ、よく見ていろ。誰が君に触っているのか」
そう言うとジェラルドはレオネの唇を舐めてきた。ジェラルドの言う通りに目を閉じずにジェラルドを見つめる。ジェラルドもまたレオネを見つめていた。目を開けたままするキスは初めてだった。
「……あの男に、キスはされたか?」
ジェラルドが躊躇 いながら聞いてきた。
「わ、わからない……意識無かった時、されたかも……」
レオネの目から再びブワッと涙が溢れる。
「ん……。記憶に存在しないなら、君がキスした男は私だけだ。私との感触だけ覚えていればそれでいい」
ジェラルドにやさしく、だが強くそう断言されて、レオネは『ああ、それでいいんだ』と素直に納得できた。
柔らかく唇を喰まれ、舌で唇の合わせをなぞられて、身体の緊張が溶けていく。
「んぁ……」
レオネが息を漏らすとその間からジェラルドが舌を滑り込ませてきた。口腔内で舌を捕らえられ吸われる。思わず閉じてしまう目をなんとか開けて近すぎてボヤケた彼の顔を見つめ続けた。
ちゅっと音を立てて唇が離れる。
「蕩 けた目をしてる……」
ジェラルドが笑いながら囁いた。
ジェラルドはもう一度レオネに軽くキスをすると、首や鎖骨にもキスを落とし、胸の先端にも同じようにキスをした。その様子を言われた通り目で追っていたレオネはもう震えることはなかった。
ジェラルドがレオネの目を見ながら見せつけるように乳首に舌を這わせる。ジェラルドの赤い舌が薄紅色のそれをツンツンと弄ぶ。
「はっ……はぁ……」
黒い瞳がレオネの反応を逐一確認し、レオネも目を離さずにそれを見つめていた。大好きなジェラルドに自身の胸を舐められている。それを目の当たりにすると身体の内側がどんどん疼いてくる。
「あっ……あんっ……ジェラルドっ……」
丁寧な愛撫にだんだん焦れったくなってきて、レオネは彼の名を呼ぶ。ジェラルドはフッと鼻で小さく笑いレオネに聞いた。
「気持ちいいか?」
レオネは恥ずかしくて頷くのが精いっぱいだった。
ジェラルドはレオネの片方の乳首にきつく吸い付き、もう片方も指で摘みクニクニと押し潰し始めた。
「あんっ! あっ、あっ、あっ」
レオネの口から耐えきれず喘ぎが漏れ出てしまう。
「前より感じ安くなってる。自分で触ってたな?」
ジェラルドがニヤっと笑いながらは聞いてくる。その意地悪な顔にもレオネはゾクゾクしてしまった。
「だっ、だって……我慢できな、くて……」
レオネは涙目で素直に白状した。ジェラルドはフーッと息を吐き言った。
「ああ、想像するだけでたまらないなぁ……」
ジェラルドが欲情しきった目でレオネの身体を見てくる。
ジェラルドはレオネの胸筋の膨らみを舌でなぞり肌をきつく吸い上げた。白い肌に紅く鬱血の痕が付く。ジャンの痕跡を覆い隠すようにジェラルドは至る所に痕をつけていく。レオネは荒く息をしながらその光景を眺めていると、チリッとする痛みすら快感に感じ始めていた。
「噛んでもいいか?」
ジェラルドが上目遣いで聞いてきて、レオネは頷いた。
ジェラルドがレオネに覆いかぶさり、縛られて剥き出しになったレオネの脇を舐め、二の腕に歯をたてた。レオネの立ち上がった胸の突起をジェラルドが着ているベストの堅い生地が刺激してくる。顔の間近にジェラルドの頭が来て、レオネはジェラルドの濃い匂いにクラクラした。グググッとジェラルドの歯が二の腕の柔らかな皮膚にめり込んでいく。
「んっ……あ……」
レオネわずかな痛みを感じ始めたくらいでジェラルドが力を抜いた。歯型を確かめるように噛んだ部分を舐められる。
「……もっと、強く噛んで……ください」
――痕が消えないくらい。
ジェラルドになら本当に何をされても良いと思っていた。今のレオネは肉を喰いちぎられても快感を感じてしまいそうだ。
ジェラルドが優しげにそして困ったように笑う。
「これが私の限界らしい。君に血が滲むような噛み方は出来ないよ」
ジェラルドはそう言うと再びレオネの肌を唇で愛撫し始める。甘く噛んだり、きつく吸ったり。首筋や胸、脇腹と下へ降りていき、レオネの肌には紅い薔薇の花びらを散らしたように濃い痕が付けられていく。
左の膝を曲げて縛られているが、固定はされてないのでレオネは脚を閉じていた。だがジェラルドの愛撫によって、レオネの中心は隠しきれないほど堅く主張している。ジェラルドの舌がペロッとその先端を舐めた。
「あんっ!」
ジェラルドがクスクス笑う。
「ジェ、ジェラルドっ!」
からかわれてレオネは抗議する。
「ごめんごめん。可愛くて」
そう言いながらジェラルドはレオネの脚を大きく開かせ内腿にも舌を這わせて吸い上げてきた。さらにそこをきつく噛む。たぶんそこにもジャンが残した痕跡があったのだろう。
するとジェラルドは顔を上げてフゥーと深く息を吐き、服を脱ぎ始めた。仕立ての良いベストを脱ぎ、サスペンダーを外し、シャツも脱ぎ眼鏡も外す。ジェラルドの分厚い筋肉に覆われた上半身をレオネは腕を拘束されたままうっとりと眺めていた。やがてジェラルドは下も脱ぎ始める。流石にレオネは恥ずかしくなり目を逸らした。
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