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ひと騒動のマリンブルー10
すると轟くんがまた小室くんをかばうように口を開く。
「渡来や間宮と仲良くしたいっていうのは本当なんだ。渡来と間宮は堂々としていて、同じ同性同士の関係として少し憧れてたっていうか……」
轟くんは少し恥ずかしそうに俯いて、それから僕を見る。
「特に凛が渡来と仲良くしようとしていた気持ちは本物。こいつさ、普段からマイペースだし、少し人とズレてるだろ。だから誰かと仲良くしようとしても曖昧なまま終わることが多かったんだ」
確かに少し不思議な人だとは思う。それで付き合いづらくて離れていってしまう人もいたのだろうか。僕は面白い人だと思ったし、僕みたいな人間に積極的に話しかけてくれるのは嬉しかった。
それにマイペースの一因に僕みたいに考えすぎるってところがあるような気がして親近感もあるかもしれない。
轟くんが喋っている間、小室くんは軽く俯いたままだ。傷、なのかな。
「俺も俺でそんなこいつが心配でいつもくっついて、そのせいか凛が自分から誰かと関わろうとすることは減っていったな。だから渡来に対して積極的だったのはそれくらい本気だったってことなんだ……」
「あのね、二人とも」
二人の表情は悲痛なもので、まるでもうこの関係が終わりだと言っているみたいだ。小室くんはきっと轟くん以上に辛い。
でも僕だってこのままは辛いんだ。
だからちゃんと、言わなきゃ。
「僕も新しい友人ができたってすごく嬉しかった……。確かにさっきのは怖かった。でも一番嫌だったのは、二人との関係が終わることなんだ」
僕がそう言うと真っ先に顔を上げるのは小室くん。その表情は今にも泣きそう。
いつも緩く笑ってのびのびしているけど、こういう顔もできるんだって、なぜか嬉しくなった。不謹慎だ。
「よければこれからも友人でいてほしいなって、思うんだけど……」
「……渡来くん……」
小室くんはふるっと唇を震わせて、僕に手を伸ばしかける。でもすぐに止めてしまった。
だから僕から手を伸ばした。抱きしめるのは流石にと思ったから、その手を握るだけ。
小室くんは目を見開いた。
「ありがとう……これからも、よろしくね」
「うん」
小室くんの顔に咲いた花に、僕もすごく嬉しくなった。
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