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桃色流星群1
松村くん選考の飲み物をちょこちょこ飲みながら昼食のお店まで行って、そこで美味しいものを食べて、それから次の目的地、水族館へと辿り着いた。
松村くんのおかげで全くとは言えないけれど、殆ど何もなかったかのように話すことができた。
小室くんのあのゆったりした喋り方がちゃんと戻ってきて嬉しい。
水族館はクリスマスに颯太と行った時と似たような感じだった。でも中は違う作りだし、海の生き物たちはそれぞれ異なった顔というか個性を持っているし、見ていて飽きない。
色々な場所の水族館巡りとか楽しそうだ。動物園も同じく。
「颯太、ちんあなごだよ」
「前も亜樹はくいついてたよね」
「うん。可愛くて好き」
六人でのんびり中を回っていると細い体を砂から飛び出させる生き物を発見した。ぴょこぴょこ見え隠れする体が可愛い。
クラゲとかエイとかも可愛いと思うけど、ちんあなごは一番可愛い。気がする。
水槽の前にしゃがんでその姿を眺める。僕の隣に颯太も並んで、指先で水槽の上からちんあなごの体を辿る。
「渡来何見つけたの?」
「ちんあなごだよ。清水くんは見たことある?」
「初めてかもなぁ」
「可愛いよね」
「そうだな」
清水くんや松村くん、小室くんも轟くんも傍に来る。大きい人多めな高校生が揃いも揃ってちんあなごの前だ。
ちんあなごは可愛いし、みんながいて楽しいし。
気分が上がっているから自然と隣を見た。颯太と目が合って、微笑み合う。
「あーやめろ、甘い」
「清水くん空気読んでよ」
「間宮こそ読めよ」
清水くんの言葉によって引き裂かれた甘い空気。
というかすっかりここがどこだかを忘れていた。恥ずかしくてすぐに頬が染まる。頬を手で隠しながら立ち上がる。
「おれトイレ行ってくる〜」
「お前迷うだろ、俺もついてく」
「じゃあ俺たちここら辺で待ってるな」
「さんきゅ」
タイミングよく小室くんが言ってくれたからありがたい。二人を見送って、邪魔にならない柱のところまで行く。
ここで先とは違う話をしながら待つだけ。
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