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桃色流星群3
「さっき夢中で見てたからあげる。間宮くんと二人で使って」
「い、いいの? 僕貰ってばかりだよ……」
「俺たちからのお詫びだと思ってくれ」
「えっ……でも……」
もう仲直りしたから、そんな気遣いはいいのに。そりゃ嬉しいけれど、初日にもお菓子を貰ったから、悪い気がする。
颯太を見ると、颯太も颯太でびっくりしているみたいだ。
また小室くんたちの方へ視線を戻す。すると轟くんが小室くんの背を肘で軽く押す。
「じゃあさ……下の名前で呼ぶことの許可と交換、とか……は……?」
恐る恐る言葉を紡ぐ小室くん。僕の顔には対照的に笑顔が膨らんでいく。
「わかった。交換……!」
「……っ、ありがとう、亜樹くん〜」
「じゃあこれからは凛くんだ」
ゆるりと微笑んだ凛くんはのしっと僕の肩に顎を乗せる。腕は腰にぐるりと巻きつく。
彼なりのスキンシップだし、僕も嬉しいから驚きもせずに受け入れた。
「はい、ストップ」
「凛も離れろ、あほ。公共の場だぞ」
「うわ、酷い〜」
お互いの恋人によって僕と凛くんは引き剥がされる。凛くんなんてペチンと頭をはたかれていた。
「初々しいのは可愛いけど、あまりひっつきすぎはダメだよ、亜樹」
「あ……うん、ごめんね」
「嫉妬しちゃうから」
「……うん」
頭を優しく撫でられて思わず笑顔になる。
「たかちゃんもあんな感じで優しくしてよ」
「無理だっつの。てかたかちゃんって呼ぶな」
「二人きりならいいの〜?」
「ふざけるならここ置いて帰るぞ」
「いやだ〜」
僕らの横ではそんなやりとりが交わされていて。可笑しくてつい笑ってしまう。
幼馴染から恋人になった二人って感じ。
こうやってくだらないやり取りを繰り返しながら水族館を回って、決められた時間の少し前に旅館へ辿り着いた。
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