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桃色流星群10
「なんかあったの〜?」
「あー……まあ、うん」
「だから亜樹くん元気ないんだ」
颯太から僕へと視線が移る。僕から話題が逸れるとすぐに指輪のことを考えてしまうから、多少驚いてしまう。
暗いからいまいち凛くんの表情は掴めないけれど、目を細めて笑んでいるように見えた。
「ご、ごめんね……」
「んーん。仕方ないと思うよ。走り去った人に関係あるなら、向かったのはあっちね。右に逸れるんじゃなくてまっすぐ」
「ありがとう」
凛くんが二手に分かれている廊下のまっすぐ先を示す。片方は旅館内に繋がっていて、もう片方は未だ中庭に面している廊下だ。
僕は挨拶もそこそこに凛くんと轟くんに手を振って廊下を歩き出す。
急ぐ気持ちを懸命に抑えて、足をゆっくり運んでいった。
颯太も僕も廊下を隅々まで見て、中庭にも視線を向ける。流石にそこへ降りることはできないからあくまで視線だけだ。
もし中庭に投げ捨てられていたとしたら、見つけるのは難しいかもしれない。
思わず唇を噛みしめる。すると颯太の手がするりと僕の指に絡み、恋人繋ぎにしてくれた。
「……颯太」
「暗いからあまり見えないよ」
「……ありがとう」
まだ諦めるのは早い。さっき颯太が言ったように、まだ全箇所見て回っていない。
それに今日がだめでも明日の朝がある。早起きをして探したりたりもできる。
そうして僕と颯太はただ中庭に面した廊下だけを見ていく。
四角形の中庭。角を二つ曲って、徐々に絶望が見え始めた頃。
「……光った」
「ん?」
「颯太、見て。なんか光ってない?」
「亜樹っ……」
言うや否や僕は颯太の手をほどいて中庭に降りる。素足だとかルール違反だとかそんなことはどうでもよかった。
まさに希望の光だ。
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