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土と緑3
ザクッザクッという土を掘る音が響く。
思っていたより長く待ち続けている。
時間内に掘れるにんじんはそんな数ではないのかもしれない。凛くんにとっては好都合なことだろう。
「島にんじんは長細いので無理やり引っ張ったら途中で折れてしまいます。でもこれくらい掘れたら、ここを掴んで、引き抜いてみてください」
見えているのは島にんじんの二分の一、もしくは三分の二くらいだ。旦那さんが緑の部分を手で掴んで勢いよく引き抜いた。
土をまとったにんじんが姿をあらわす。思わず感嘆の息が漏れた。
野菜の収穫を生で見るのは初めてだ。野菜を育てることは一度はやってみたいと思っていたから余計に感動する。
「じゃあ皆さんもこのスコップを取ってから、畑に入ってやってみてください」
奥さんの声で各々大量に置いてあるスコップを手に取り、畑へと踏み入れた。
自然と班で固まる形になっている。
「わっ……」
「大丈夫? 亜樹」
「うん。思ったより不安定」
「いざとなったら俺が支えてあげる」
「……だ、だめ。そういうの」
赤くなる頬を逸らして、先にいる班員四人に早足で近づいた。
かっこいいことを言うのは二人きりの時にしてほしい。颯太はすぐそうやって僕で楽しむんだから。
「オレが一番掘ってやるぜ!」
「茂がやったら途中で折れそうだな」
「なんだと!」
「とりあえずこの三本をそれぞれやってくか」
息巻いている松村くんに、どこか憂鬱そうな凛くんが対照的だ。
松村くんの言葉をごく当たり前にスルーした清水くんに従って、横一列に並ぶ。
向かいには颯太、隣には辟易した顔の凛くん。
「亜樹くんほんとやだ」
「掘るのは楽しいよきっと」
「土で手汚れそう〜」
「それは仕方ないって」
嫌いなものはきっと見るのも嫌なんだろう。僕だってそういうところあるし。
でも嫌がりすぎる様子がどこか微笑ましくて、僕の口からは苦笑が漏れる。
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