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愛はガラス3

「ほんと何してんのかと思ったわ〜!」 「だからごめんって」 松村くんの大声に颯太が苦笑して謝罪する。 「茂、もうやめてやれよ」 清水くんも溜め息を吐いて言った。 カヌー体験が終わり、バスに乗り、旅館の部屋に戻る。この間ずっと松村くんは似たような言葉を繰り返している。 というのも、僕らが少し遅れをとったことで七班のメンバーが焦ったらしい。ちょうど川が曲がっていたから、僕らの姿が見えなかったという。 結局のところすぐ追いついたから何事も起きなかったけど。 はぐれたのか、沈んだのか。 そんな憶測が飛び交って、一時騒然としたみたいだ。 心配をかけて申し訳ない。だから松村くんが色々言うのもわかる。仕方ない。 流石にもうそろそろ諦めてもいいんじゃないかなって、思ったりはしたけど。 「まあなー。二人が無事だったからいい」 「心配かけてごめんね」 「にしても二人とも何してたんだ?」 轟くんの言葉に僕の脳が衝撃を受ける。 颯太が僕に気持ちを伝えてくれていた。 ……なんて言えないことは当たり前中の当たり前だ。 「マングローブがあまりにも綺麗で漕ぐの忘れてただけだよ」 「あー確かに綺麗だったもんな」 颯太の綺麗な返答に僕はホッと息を吐く。 「あーきーくん」 「ひっ」 すると急に凛くんが顔を覗き込んできた。その顔はどこかにやにやしていた。 これはもしや、何か怪しまれている? どう考えてもこの表情はそうだ。詳細はわからずともどんなことがあったかは予想がついているみたいだ。 「何してたの〜?」 「な、何もっ……」 「間宮くんと何してたの〜?」 「だからマングローブ見てただけだよ……」 スッと視線をそらすも、凛くんがまだにやついているのはわかる。 「お食事をお運びしました」 しかしちょうどその時、中居さんの声がして、襖が速やかに開く。 そのあとはまたもや松村くんが食事に騒いだので、僕と颯太の話題は露と消えた。 その後も各々好きに過ごして、無事眠りについたのだった。

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