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愛はガラス4
○ ● ○
すやすや気持ちよさそうに眠る恋人。その肩に優しく触れて揺らした。
「……んっ……」
どこか艶めいた声が漏れ、まぶたが静かに持ち上がる。目覚めたばかりの丸い瞳は焦点が合っていない。
しかし俺を俺だと認識した途端、花が開くようにふわっと微笑む。
思わず生唾を飲み込んでから、俺も笑みを返す。
声を出さずに口の動きで『おいで』と言い、亜樹の手を取った。
亜樹は大人しく付いてくる。
そうして俺たちはこっそり部屋を抜け出した。
裸足がぺたぺたと廊下に音を鳴らす。亜樹は目を擦りつつ、俺の手に頼って後ろを歩く。
しかしひんやりした床は徐々に亜樹の頭を冴えさせていったようだ。
「颯太……今何時?」
「んー、夜中」
一歩踏み出して横に並んだ亜樹。それでも手を離さないところは本当に可愛い。
それにいつの間にかルール破りを当然のように受け入れてしまっている。これは悪影響を与えたか。だがこうして二人きりになれたなら、お互い幸せであろう。
「夜中って……。どこ向かうの?」
「亜樹と一緒に行きたいところ」
「どこ?」
「ふふっ」
笑みを返すと亜樹は若干唇を尖らせた。そこへすかさずキスを落とす。
「……だめ」
亜樹は口を押さえてパッと顔をそらす。
今のだめは我慢できなくなっちゃうからの方の『だめ』だろう。
こうして見ると、いつもの亜樹だ。
「あ、ほら。ついたよ」
「……足湯?」
視線を前に戻すとちょうど湯気が視界に入る。
そう、足湯だ。昨日見た時から亜樹と来たいと思っていた。
亜樹の手を引いて二人で椅子に腰掛ける。
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