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愛はガラス5

「……温かいね」 「よかった。冷めてなくて」 こんな夜更けには冷めているかとも思ったが、つけた足はすぐに温かさを得る。 いくら沖縄とはいえ、二月の夜は流石に寒いからありがたい。 「あ、そうだ。ほら」 「え?」 手に持っていた制服のブレザーを亜樹と俺の肩にかける。亜樹の腰を引き寄せて密着すれば一枚でも温かい。 「……こっちも、温かい」 「うん。温かいね」 ぽつりと落ちる亜樹の声。 そのまま亜樹は頭を俺の肩にもたれかける。 こうしていると初めて会ったばかりの時のようだ。照れる亜樹を無理やりこうした。 懐かしくて、遠い記憶。 今や自分から来てくれるようになったのは大きな進歩だと思う。 「沖縄……なんだよね」 「ん?」 「ここって……」 「そうだね」 隣を視線だけでうかがうと、亜樹は夜空を眺めていた。その瞳が星々の輝きを反射して煌めいていた。 「九州よりも全然南だね」 「……うん。すごく南に、颯太と来た」 二人で逃げていた時には来られなかった南の地。 今こうしていられるのは、一緒の未来を掴んだから。二人で立ち向かったから。 それはこれからも変わらないはずだ。 少なくとも俺の中では、変わらない。

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