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愛はガラス6
「これからはもっと色々なところに行けるね。ずっと一緒なんだから」
「……うん」
ふるっと亜樹の肩が震える。それからすぐに俺の胸に顔を埋めてきた。
「寒いからぎゅっとして……」
「うん。いいよ」
華奢な身体を抱きしめると、愛しい体温がとくとく伝わってくる。
いつまでも離さないと思う恋人。
だからこそ、心配だ。
この頃の亜樹はどうしたのだろう。どこか危なっかしい雰囲気をいつも持っている。ふとした瞬間に怯えを見せて。
今だって必死に涙を堪えているのがよくわかる。だがその不安の正体はわからない。
人の気持ちを察するのは得意だという自覚はあったから、この状況はもちろん予想外だ。
一つわかるのは、未来の話をするとこうなることが多いってこと。
まだ一緒の未来というのが信じきれないのだろうか。
そう思ったりもして、前以上に亜樹と二人きりの時には想いを表すようにしている。
指輪だって二人の未来を形にしようという理由も含まれている。
「こうして抱き合ってるとすごく温かいね」
亜樹の背中を優しくさすってやると、頭が小さく上下した。
亜樹は基本的に何でも抱え込むタイプだ。それは他人に慣れてきた今でも変わらない。根本の性格など人間が変えることはほぼ不可能なのだから。
そのためきっと今、悩んでいることを聞いても答えてくれない。それだけはわかる。
大丈夫だと、もう解決したよ、と笑わせてしまう。
ここまで不安がる悩みならなおさら。
「亜樹〜、好き〜」
「……僕も、好き」
だから俺にはこうして亜樹をただ大事にしてやることしかできない。
甘く溶かして、少しでも不安が紛れるように。亜樹がその不安を完全に解消できるその時まで、ずっと包み込んで。
亜樹の頭ごしに夜空を見上げると、半月が夜空に浮かんでいた。
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