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愛はガラス7

○ ● ○ 空港に入る前に顔を上げる。空はからりと晴れ渡り、帰郷を爽やかに見送ってくれているみたいだ。 四日目、最終日の今日は有名な門を見に行って、様々な地域の食べ物が集まる区画で昼食を取った。 そして昼下がりの今、飛行機に乗るため空港へ来ている。 「もう帰るのかぁ……」 「四日しかいなかったけど名残惜しいな」 「だよなー、まじ寂しい」 松村くんも清水くんも、立ち止まって空を見上げる。 うっすら見える海に、ちらつく緑の木々。高い建物のない広々とした風景。 たった四日。だが記憶にしっかり刻まれている。 「沖縄、楽しかったね」 「うん。来られてよかった」 ソッと背中に手が添えられる。柔らかくて温かくて大きい颯太の掌。 はっきり言って颯太と一緒なら何でもいい。でもそれを差し引いても修学旅行はすごく楽しかった。 「たかちゃ〜ん」 「たかちゃんやめろ」 「んー……おれのことまた連れてきて〜……」 「連れていってもらう前提かよ」 轟くんも凛くんもどこか寂しそう。でも未来の話は明るくて、二人とも二人だけの空気。微かに微笑みあって、肩同士は触れ合いそうだ。 僕と颯太のことを散々からかうけど、二人だって負けていないと思う。 「まあ、楽しかったからいい! な!」 清水くんと何か話していた松村くんが、一歩前に出て叫ぶ。 その前向きな言葉に皆笑みをこぼす。 確かにそうなんだ。少し問題もあったけれど、最初で最後の修学旅行は楽しくて。七班で回れた沖縄はすごく幸せで。 そんな思い出があるから寂しさも乗り越えられてしまう。 「楽しかったな」 「うん、いい経験〜」 「ああ」 「すごく楽しかった」 「よかったよね、来れて」 めいめい返答を返して、故郷へ向かう飛行機へと乗り込んだ。

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