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Respective ways 4
「何も言わねーってことはその通りなんだな」
「せ……」
「だがそう易々と手放すかよ」
急に腕を引かれ、部屋に連れ戻される。当然抵抗しても敵うはずはない。そして無理やりベッドに投げられた。
うつ伏せの状態にされ、その上に誠也がのしかかる。
「こうすりゃ嫌いなおれの顔も見えねーな」
「やめっ……」
「うるせー」
無理に腰を高く上げさせられ、ズボンに手がかかる。
こんなの何をされるか嫌でもわかる。今から誠也は僕を抱く気だ。
一体何のために。もう用無しの僕を。
でも理由なんかどうでもよかった。今こんなことをされたら、僕は生きていけない。
最後の最後に刻み込まれてしまったら、潔く諦めることなど、できはしない。
それだけが、確かなこと。
懸命にもがき、誠也の手を止めようとする。ズボンにかかる手を振り解こうとする。
しかし上半身を更に押さえつけられただけだ。
嫌だ。こんなの、嫌だ。
こんな終わり方、誰のためにもならない。
何より僕が、耐えられない。
「……め」
「あ?」
「やめ……て、くれ……」
気づけば僕の口からはみっともない言葉が漏れていた。
でも今さら羞恥などどうでもいい。これ以上、何もされないためなら、どうでも。
「……柊」
しかし誠也はその声で我に返ったようだ。声にはいつもの響きが戻っている。
「悪い……お前を失うと思ったらつい熱くなっちまった」
「……意味、わからない」
「おれだってわかんねーよ。なんで急にお前……」
誠也が僕の上からどいてベッドに腰掛ける。しかし僕は顔を枕に埋めたままにする。
すると誠也の手が僕の頭を撫でた。
「いや、悪いのはおれだよな。おれがいつまでも話さねーから」
「……意味、わからない」
「ああ。今から話す」
誠也は最後に僕の頭を軽く叩く。それから紙音がして煙草の臭いが鼻に届いた。
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