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Respective ways 6
どうして今、僕は誠也と二人で久我の門の前に立っているのだろう。未だに理解できない。
そもそもの始まりは、
『一緒に住むぞ』
誠也のこの言葉だ。
お互いの誤解を解いて、これからも頻繁に会える可能性が高いと話した。本来ならそこで安心して終わりのはずだ。
しかし誠也は一緒に住もうと言う。
そしてならば両親に挨拶だと言う。
そしてあれよと言う間にここまで来てしまったのだ。
両親には学費以外の面倒は見ないと言われている。というより、大金を一気に振り込むから勝手に暮らせという形だ。だから誰と住もうと両親には関係ない。だからわざわざ報告に来なくてもいい。
そのことも誠也に伝えた。しかし頑としてこいつは聞かない。何を考えているのか、こういう時は本当にわからない。
「あー緊張すんなぁ」
「なら帰るか」
「その手には乗らねー。てか親御さんに言ってあんだろ、今日のこと」
「……ああ」
隣の誠也はもちろんピアスは外している。しかも仕事の時にもしているらしい黒髪のウィッグにスーツ姿だ。
僕の知らない誠也が、ここにいる。
金髪の方が似合っているとか、これはこれでかっこいいとか、そんなことは思っていない。
「おら、入んぞ」
「大丈夫か、言葉」
「柊の前だけだっつの」
バシンとかなり強めに背を叩かれ、僕は渋々門を開ける。
まだ状況は掴みきれていない。
できることなら引き返したい。
両親とは極力関わりたくない。
誠也の考えはわけわからない。
しかし足を前に進ませているのも事実だ。誠也と並んで久我の家の玄関に辿り着いてしまう。
そして誠也は迷うことなくインターホンを押した。
もはや先の乱暴な様子は欠片もない。至って真面目なサラリーマンといった見た目。やはりこういうところは経験の違いなのだろうか。
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