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Respective ways 10

久我の家に近い公園のベンチ。二人並んで腰かける。 隣の誠也を窺い見るが、もうすっかり冷静になったようだ。未だ苛ついた様子は見受けられるが突拍子もないことは言い出すように見えない。 誠也は小さく溜め息を吐くと、その口を開いた。 「悪い、ついカッとなった」 「いや、それは構わないが……」 「言っちゃ悪いが柊の両親の言葉に苛ついた。実の子供にあんな言葉を吐くなんてよ」 誠也はガリガリ自分の頭を掻く。そして鬱陶しくなったのか、黒いウィッグを剥ぎ取る。 金髪の誠也。いつもの誠也が隣に現れる。 「あそこでキレても逆に柊を手に入れられない可能性があったから何も言わなかったけどよ。あー、でもほんとイラつく」 苛立つ誠也。反して僕はどこか浮ついてしまう。 本当に誠也は、馬鹿ではない。馬鹿そうに見えて、不良に見えて、そうではない。 「……なぜ、結婚を持ち出した」 「んー? 柊を完全におれのもんにしたら久我と縁切れるだろ。両親の庇護下から解放される」 「いや……僕が二十歳にならないと」 「そう。冷静に考えたらそうなんだよ」 誠也はまたもや溜め息を零す。冷静さを欠いた自分に呆れてしまっているのだろう。 でも僕の口からは自然と笑みが漏れた。 「別に僕は」 そこまで言って、つい癖で言葉を止める。

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