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With memories 4

不思議そうな顔をする誠也。遅れて自覚する今の自分の言葉。 なぜ誠也にお礼を言ったのか。自分でもわからない。 「甘いねぇ」 「なっ……!」 それを理解する前に颯太のからかう声が飛んでくる。にやにやして僕を見て、隣の亜樹もどこか微笑ましそうにしている。 確かに今の様子は、いや、とにかく甘いと言われる筋合いはない。何より二人にそう思われるのはいただけない。 だが何も言い返せずわなわな唇を震わせていると、俊憲さんが小さく笑った。 「二人の仲の良さがほんの一瞬で伝わってきたよ」 「と、俊憲さんまで……」 「なに、安心しただけだ」 そう言って紅茶を一口含む。それから誠也に視線を移した。 「誠也くんはいくつなんだ」 「三十一です」 「ふむ……。ではウィッグの下を見せてくれるか?」 「……はい、えっ」 誠也だけでなく僕も驚いて俊憲さんを見てしまう。 誠也の今の姿はどう見てもウィッグに見えない。会社でやっていけているのだからすぐ見破れるものではないはずだ。 一度接触したことのある颯太と亜樹も不思議そうにしているから尚更。

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