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With memories 5
俊憲さんはティースプーンで一回カップをかき混ぜる。それから驚く僕らを見た。
「最初から気づいていたよ。九条の頂点に立つにはこれくらいできなければな」
「すごいですね……」
「で、取ってくれないのかな。柊を預ける人間の本当の姿は見ておきたい」
「あ、はい」
するりと誠也はウィッグを外す。そして派手な金髪が現れる。
誠也はまるで僕みたいに軽く唇を噛んだ。
僕には俊憲さんが見た目で判断する人間でないことはわかっているが、誠也がそれを知る由もない。
「金髪か……。うむ、その方が似合っているな」
「ありがとう、ございます……。ですが」
「気にするな。見た目と人柄は必ずしも直結しているわけではない」
俊憲さんの言葉に誠也は表情を緩める。
そして羨望にも似た色がその瞳には混じった。
「未成年の同棲というのは大きいことだから、本当は色々質問しようかと思っていたが、どうやら大丈夫そうだ。こんな短時間で伝わるほどの想いらしいからな」
俊憲さんは少し目を細めて口角を上げる。その声にはからかいの響きが含まれていたから、これが冗談を言う時の顔なのだろうか。
恥ずかしくなって横目で誠也をうかがう。しっかり視線が絡んでしまって慌てて前に戻す。
それにも俊憲さんは笑んでからすぐに真面目な顔つきになる。
「戸籍上だけでなく、わたしの気持ちの上でも、柊は九条の息子だ。誠也くん、わたしの息子を、よろしく頼む」
その口から放たれた音。僕の口からは震えた息が漏れる。
膝の上の手が自然と丸くなる。
そこに密かに重なる温かさ。
「はい」
一呼吸の間を置いて放たれた誠也の言葉は、今まで聞いた中で一番頼もしく、かっこいい。
重なった手から熱さが目頭まで伝わってきそうだった。
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