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わくわく遊園地3
幸い待ち列は短かったのですぐに順番が回ってきた。
浅い船型の乗り物に四人並んで座る。まず村本さんが乗って、柊先輩が続く。それから颯太が僕を押し込んでその隣に陣取る。
なんだか大きい男性陣が僕と柊先輩を守ってるみたいだ。いや、柊先輩も十分大きいけれど。
幸い最前列に座れて視界は良好だ。
「それでは冒険に、しゅっぱーつ!」
案内人のお姉さんがそう言ってゆっくり船が動き出した。
様々な動物を模したキャラクターが登場する中を進んでいく。
「しゅーう、怖くねーか?」
「は?」
「いやーこういうの苦手じゃねーのかと思って」
隣の二人からそんな会話が聞こえ始める。
村本さんの言葉に僕はとても驚いてしまう。
柊先輩がこういうのが苦手。つまり、アトラクションが苦手。だとしたら今日は一切楽しめないことになって。でも柊先輩は約束を守ろうしてくれて、今日は無理して。
「し、柊先輩、ごめんなさい」
「亜樹? 何を言っている」
「柊が苦手なのに乗ってくれてるからだろ」
「はい……ごめんなさい、僕らのために……」
「亜樹、落ち着け。だから……」
「ほら、気を遣わせてるぞ。柊先輩?」
「誠也……!」
柊先輩が僕を見たり村本さんを見たり、その間に会話は進んでいく。
柊先輩が焦れたように叫んだ時、颯太がブハッて吹き出した。一人で可笑しそうに笑っている。
僕はその様子に疑問符を浮かべることしかできない。すると村本さんもふっと吹き出して、柊先輩は盛大に溜め息を吐いた。
「亜樹……だったか。面白いな、お前」
「……え?」
「亜樹、今のやり取りは全てこいつの冗談だからな」
「……え?」
「だからね、柊はこういうの苦手なわけじゃないの」
村本さん、柊先輩、颯太に順々に言われて僕はやっと状況を理解する。頬がポッと赤くなってしまう。
最初は柊先輩をからかう言葉だったろうに、それがいつの間にか僕に変わっていたのか。
「柊をからかうのもおもしれーけど、亜樹も亜樹でおもしれーな」
そう言って村本さんがカラカラ笑う。すると颯太が僕の肩を抱いた。
「でもあんまりいじめないでくださいね」
「ははっ、姫さんだもんな」
「ふん」
「おれの姫さんはお前だぞ」
「煩い」
柊先輩がすごい形相で村本さんを睨んで、それからそっぽを向いた。
船はまだ進み続けている。ナレーターの声が説明をしつつ、時々船が軽く跳ねてバシャッと水しぶきが起きる。
会話をするときは村本さんが均等に話題を振りつつ、アトラクションに集中するときはして、船は進んでいった。
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