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わくわく遊園地5

ちょうどどの飲食店も空き始めた時間だったので、選んだ店にはすぐ入れた。 四人がけの席にそれぞれ座る。僕の向かいには柊先輩だ。 各々好きなメニューを頼んで、談笑しつつ食べ進めて。 「柊って村本さんといるとき甘えるんですか?」 その途中で颯太がとんでもないことを言い出した。 僕と柊先輩は箸を持ったまま固まってしまう。 「あー……まあ、ごく稀にかもなぁ」 「やっぱ村本さん相手にもなかなか見せないんですか」 「こいつ意地っ張りだかんな」 しかし村本さんは事もなげに話し出す。その顔には笑顔が浮かんでいて、とても楽しそうだ。 その隣の柊先輩は俯いていて表情はわからないけど、箸を持つ手には力が入っている。 「ツンデレ、ってやつですか」 「そういうことだ。でもま、甘えた時の柊は……」 「せ、誠也! ふざけるな!」 「なんだよ、恋人自慢ってやつだろ?」 「煩い!」 我慢の糸が切れたのか柊先輩がボカッて村本さんを殴る。結構な強さに見えたけど村本さんはへでもないと言った感じ。笑ってその拳をどかしている。 柊先輩は顔が真っ赤。初めて見る。 改めて二人は恋人同士なんだと実感できるっていうか、村本さんは柊先輩で楽しんでいるんだな、というか。 「てか、そっちはどうなんだよ? 随分と甘えてくれそーに見えるがな」 「……!」 「まあ、こっちは……」 「そ、颯太っ……」 口元に手を当ててニヤニヤこちらを伺う颯太。僕は颯太の腕をぎゅうっと掴んで目で懇願する。 「しょっちゅう甘えてくれてすごく可愛いですよ」 「なるほどなぁ」 「颯太……!」 うるっと瞳に水分が宿る。 もう完全に楽しまれている。僕も柊先輩も太刀打ちができない。女側っていうのはこんなにも不利なのか。 「二人とも黙って食え」 しかしこの場に落ちる冷え冷えとした声。 柊先輩を見れば恐ろしいくらいの無表情だ。かつて抱いていた怯えが蘇りそうなほど。 僕の番の間に冷静になってしまうなんてさすがだ。 「はーい」 「怒んなって」 村本さんも颯太もこの言葉には従ってくれるようだ。 そうしてやっと平穏な食事が戻ってきた。

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