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わくわく遊園地6
「村本さんって……」
「ん?」
昼食を終えたあと颯太が村本さんに声をかける。なにやら雑談を始めたようで、自然と並びが僕と柊先輩、村本さんと颯太に変わった。
昼食の時もそうだったけど、二人ではないと話せないこととかがあるのかもしれない。
いや、まあ、あんな恥ずかしい内容はごめんだけど、だけど、止める権利もないし。
「また何か話しているな」
「ふふっ。そうですね。聞こえないだけまだよかった」
辟易とした表情の柊先輩に思わず微笑んでしまう。
「どうせ先程のようにくだらないことを言っているのだろう」
「でも二人が楽しそうならいいんじゃないですか?」
「そうやってすぐに亜樹は前向きに捉えてしまう」
「だって颯太のこと大好きなんですもん」
颯太のことが好きだから、いくらからかわれても最終的には愛しいって思えてしまう。その笑顔が見れたら、それでいいんだって思えてしまう。
ごく自然にそう言った僕。対して柊先輩は固まって、何とも言えない顔をした。
引いているとも、驚いているとも言えそうな。
「よくそうあっさりとそのような言葉が出るものだな」
「大好き、ですか?」
その言葉だけで柊先輩はまた固まる。
「……ああ。僕には言えない言葉だ」
「でも村本さんのこと大好きなんですよね?」
「……っ」
また柊先輩は固まる。
目を見開いて、視線を少し落とし、戻し、ほんの少し唇を噛んだ。
「……当たり前だろう。僕にとって、なくてはならない人だ」
がつんと脳に衝撃が襲ったみたいだった。
ほんのり頬を染めて、どこか幸せがにじむ表情をして。
柊先輩とは思えないほど、可愛らしい表情。村本さんが惚れてしまう気持ちも、今ならわかる気がする。
やっぱり誰かに愛されると、人って大きく変わるものなのかもしれない。
愛する人のことを話す姿って、やっぱり、素敵なのかもしれない。
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