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わくわく遊園地7
「それ本人に言ってあげたらどうですか?」
「そっ……んなこと、できるわけないだろう」
「でも喜びますよ?」
柊先輩は顔をさらに赤くさせて口元を手の甲で隠す。
普段から様々な人から可愛いと言われる僕だけど、今だけは可愛いを言う側になりたい。柊先輩に対して。
元から想い合っているのは柊先輩と村本さんを見ていて伝わってくるけれど、こうやって言葉にすると威力が凄まじい。
さっきの言葉もさっきの表情そのままで村本さんに言ったら、村本さんは卒倒してしまうんじゃないだろうか。
「……こんなこと、亜樹だから言えるだけだ」
「し、柊先輩……」
またもや脳に衝撃。
柊先輩の本音を聞けるのは、ある意味僕だけということではないか。
純粋に嬉しい。
でも確かに僕もこうやって颯太のことを気兼ねなく話せるのは柊先輩かもしれない。僕らの関係を知っているだけでなく、同じように男性の恋人がいるっていうのは大きい。
「亜樹は颯太に自然とそういうことが言えていそうだな」
「確かに……あまり羞恥は、ないかもしれないですね……」
「甘い空気を撒き散らすわけだ」
「ちょっ……先輩まで……!?」
軽く笑んだ柊先輩の表情は、完全にからかう時のそれだ。
最近よく言われるようになったけど、そこまで甘い空気なるものを出しているのだろうか。出会ったばかりの頃とか、颯太と俊憲さんの和解前より、距離は近づいたと思うけれど……。
「あーき! 次これ乗らない?」
「ひゃっ!」
一人ぐるぐる考えていたら、後ろから颯太が抱きついてくる。
そしてすっとパンフレットを見せてきた。
これまた絶叫系のやつだ。楽しそう。
「ほら、行こ」
「うんっ」
「柊も行くぞ」
「……ああ」
颯太に導かれてアトラクションへ向かう。その後ろから村本さんと柊先輩もついてきた。
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